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2022-07-18

発達障がいのこどもがマスクが着けられないときどうする!?感覚過敏の障害特性を知ろう

発達障がいを抱えるこどもたちのなかには、マスクを着用するのが難しいお子さんが少なくありません。風邪やインフルエンザが気になるとき、とくにコロナ禍が始まってからは、外出中ずっとマスクを着けなければならないシーンが増えてきました。

しかし、嗅覚や触覚などの感覚過敏が強い発達障がいのこどもたちにとって、マスクを着用し続けられない、そもそもマスク着用を拒否される、といった悩みを抱える親御さんや先生の声を多く耳にします。

大人やこどもに関係なく、発達障がいのある人の約半数は我慢しながらマスクを着用していたり、着用ができずに困っていたり、といった深刻な悩みを持っています。

しかし、コロナ禍の波が一進一退を続ける今、日本では学校や保育園・幼稚園をはじめ、お店や公共施設、電車やバスなどで「マスクの着用をお願いします」と貼り紙があったり、アナウンスがされていたりする光景は日常的です。もしマスクをしていないと、スタッフから注意を受けたり、利用を断られたりする場合が実際に高くなっています。

それでは、発達障がいのこどもたちはマスクとどうやって付き合っていけばいいのでしょうか。そこでこの記事では、発達障がいの特性が原因でマスクの着用が困難だったり、マスクを拒否したりするこどもたちの理由やその対策についてご紹介します。

発達障がいの特性のひとつ、感覚過敏とは

自閉症スペクトラム障がい(ASD)や注意欠陥多動性障がい(ADHD)など発達障がいを持つこどもたちのなかには、感覚特性が強く現れる場合があります。

たとえば、次のようなシーンをイメージしてみてください。ガラスの板を爪で引っ掻くときの音や発泡スチロールを擦るときの音が出ると、背中がゾワゾワして苦手だという感覚はありませんか?

また、通りすがりの人の柔軟剤や香水のにおいに鼻を刺激されて吐き気を催した経験はないでしょうか?

一方で、フカフカのホテルのタオルの肌ざわりが好きだったり、タクシーの車内のにおいが好きだったり、といった感覚の好みも人にはあります。

このように、ある刺激を受けたときその感覚が苦手である、得意である、好き嫌いといった好みのことを感覚特性と呼びます。発達障がいのなかでもとりわけ自閉症スペクトラム障がい(ASD)の傾向が強いこどもたちに現れやすいのが特徴です。

感覚特性の現れ方

感覚特性で問題となる人間の感覚は、五感のほか前庭覚と固有覚を合わせた7種類の脳の領域です。それぞれの感覚にまつわる感覚特性の問題を具体的に見ていきましょう。

五感1「聴覚」
・街の雑踏のざわざわした騒音を聞くと不安感に襲われる
・刺激を感じたいために耳を引っ張ったり、頭部を叩いたりする

五感2「視覚」
・直射日光や蛍光灯の光をまぶしく感じたり、吐きけを催したりする
・印刷された用紙の紙質によって文字が読めないことがある

五感3「臭覚」
・洗剤や香水、石けんなどのにおいで気持ちが悪くなる
・自分の体臭や汗臭さなどに鈍感である

五感4「味覚」
・味や舌ざわりの問題で特定の食材が食べられない
・ずっと同じ食べ物ばかりを食べたがる

五感5「触覚」
・周囲のこどもたちと明らかに暑さや寒さの感覚が異なる
・手をつなぐ、肩を触られるといったスキンシップが苦手
・刺激を感じたいために体をつねったり、叩いたりする

「前提覚」
バランス感覚や回転している状態を感じる感覚のこと

・乗り物が苦手ですぐ酔ってしまう
・同じ姿勢をキープできない
・体を動かしたり、ぐるぐる回っていないと落ち着かない

「固有覚」
身体や各部位がいまどこにあるのか位置や動きを感じたり、力加減がわかる感覚のこと

・身の回りの動作で力加減をしながら作業するのが難しい
・ものをよく落とす、よくこぼす

感覚特性の現れ方は、人によってさまざまです。臭覚だけが敏感で、その他の感覚は平均的だったり、触覚や臭覚、味覚などあらゆる感覚に特徴が強く、日常生活に大きな支障が出る場合があったり、など個人差があります。

感覚過敏/感覚鈍麻とは

かつて発達障がいは遺伝や育児が原因だと言われていたこともありました。現在では、生まれつき脳の働きに偏りがある先天的な問題と考えられています。

とくに自閉症スペクトラム障がい(ASD)の傾向があるこどもたちは、あるひとつの情報を脳が受け取ったとき、定型発達のこどもたちとは異なる感覚情報になってしまうことが多く見られることがポイントです。

そのため、周囲の人たちにとっては取り立てて問題のない刺激であっても、過剰に反応する、またはほとんど反応しない、といったことが起こります。これが感覚過敏または感覚鈍麻です。

日常生活ではさまざまな刺激を受け取りながら人は暮らしています。例えば、通行人とすれ違うとき、わずかに柔軟剤のにおいが漂っていたとしましょう。定型発達のこどもたちはほとんど気に留めないか、においを感じても反応せずに過ごせます。しかし発達障がいで感覚過敏のある場合、気分が悪くなる、その場にいるのが苦痛になる、パニック状態になる、など日常生活に支障をきたすような苦痛として感覚情報を脳が捉えてしまうのです。

一方で、感覚鈍麻は感覚が極端に鈍感で、外部の刺激を感じづらい特性です。触覚鈍麻の場合は、切り傷や骨折などのケガをしているのに、痛みを感じないため、発見が遅れて処置が遅くなることがあります。また、味覚鈍麻であれば、甘味や辛味、塩味などを感じづらく、味が薄くても濃すぎる味付けの料理でも平気で食べてしまう、といった感じです。

マスクの着用を無理にさせるのはほぼ難しい

生まれつきの脳の働きの障がいによって現れる感覚特性を、育児や教育で後天的に直すことは基本的にまずできないと思っていいでしょう。もし、あなたが口にするだけで吐き気を催してしまう大嫌いな食べ物を無理矢理食べなさいと言われたら、どうでしょうか。我慢して食べようとしても身体が受け付けない、下手をすれば実際に飲みこむ前に吐いてしまうことになって、収拾が付かなくなってしまうはずです。

このように、生理的にどうしても受け入れられないレベルの問題が、世間の平均的なレベルより極度に多いのが感m覚過敏や感覚鈍麻という特性です。

したがって、日常生活でお子さんが感じているさまざまな苦手なことを、無理に慣れさせようとするのは避けるようにしてください。食べられないものが多いからといって、食べ終わるまで食べさせたり、日光や雑音を過敏に捉えて外出が苦手なこどもを強制的に連れ出して外で遊ばせたり、といったしつけは成功しないばかりでなく、こどもたちの心をますます傷つけてしまいます。

苦手なことを克服するのは諦めたうえで、周囲の大人たちはこどもが少しでも感覚特性の影響を受けづらいように配慮する気持ちが大切です。できるだけ感覚特性が働かないような工夫をする、感覚過敏のこどもたちでも日常生活を無理なく暮らせるような対処法を考えることで、時間をかけながら苦手なことへの感覚を慣れる方向へとリードしてあげましょう。

マスクの着用も感覚過敏のある発達障がいのこどもたちにとっては、着けるのを極度に嫌がる場合があります。マスクを着けた場合の、次のような感覚を極端に刺激と感じて不快に思ってしまうからです。

・不織布や布生地の肌ざわりが苦手
・耳にかかるゴムの引っ張られる感じにかゆみや痛みを感じる
・呼吸がしづらく圧迫感がある
・マスク内側のムレが苦手
・ノーズフィットワイヤーで鼻が痛くなる

感覚特性の強いこどもたちは、マスク着用時の不快感に我慢する、慣れるということは困難です。そのため、一人ひとりの感覚過敏の傾向に合わせたマスクの選び方、使い方が大切になります。

生まれたときから感覚過敏の強いAちゃんのケース

Aちゃんは、生まれつき感覚過敏の強い女の子でした。抱っこを嫌がる、素肌に触られるのが苦手、服やタオルなどで気に入ったものしか着れられない、など、育児のさまざまなシーンで多くの悩みごとにぶつかりました。

長袖の手首部分にゴムが入っていると嫌がったり、帽子や自転車用のヘルメットをかぶろうとしなかったり、家の中はもちろんのこと外出するのすらひと苦労です。

私たちにとっては服や帽子をはじめ身体に身につける物は当たり前で抵抗がなかったとしても、発達障がいのあるこどもたちのなかには身体にとって異物と感じてしまって、着けるのを嫌がるケースは少なくありません。帽子やヘルメットすらダメというわけで、当然コロナ禍で外出時や屋内に入るときのマスク着用が常識になってから、マスクを着けてもらおうにも頑として嫌がりました

感覚特性の問題は、学校や療育施設に理解をしてもらって、配慮してもらえる場合もあります。できるだけ外遊びにする、他のこどもたちとのソーシャルディスタンスを守るようにスタッフが気をつける、など、マスクを着用できるお子さんとうまく溶け込むように工夫していきました。ただし、スーパーマーケットやコンビニエンスストアをはじめ公共施設などへの入る場合は、原則としてマスク着用のお願いの案内が出ているため、マスクを着けられないAちゃんとの外出は思うような移動ができずに大変な場面も数多く生まれます。

病院のように、どうしてもマスクを着用しなければならないシーンで着けてもらえるように、こども向けのファンシーなマスクをいくつか買ってみました。しかし、マスクの肌ざわりや息のしづらいそのものが苦手なだけに、あまり効果はありません。今後もマスクを着用しなければならない場所は残るでしょう。そのため、少しずつマスクに慣れてもらえる工夫を考えて試していくと、着用できる機会や時間が延びていきました。

厚生労働省や自治体の啓発活動

厚生労働省や地方自治体の公式ホームページでは、マスクの着用が困難な発達障がいを持つ人への理解を促すアナウンスをしています。

厚生労働省の公式ホームページによると、WHOが発表している発達障がいとマスク着用との関係について引用しています。

”WHOの「COVID-19に関連した地域社会の子どものためのマスク使用に関するアドバイス」(*2)においては、「発達上の障害や他の障害、またはマスク着用に支障をきたす可能性のある特定の健康状態をもつ子どもに対しては、マスクの使用を強制するべきではない」「フェイスシールドなどのマスク着用に代わる選択肢を与えるべき」としています。”

そのうえで、発達障がいのある人のうち、次のようなポイントをまとめています。

・感覚過敏の障害特性でマスクの着用が困難な状態にある場合があること
・感覚過敏の特性は、こどもだけでなく大人になっても続く場合があること
・マスク以外のフェイスシールドも着用ができない場合があること
・発達障がいなどの状態に合わせて、こどものマスク着用は必須ではない

以上のような内容を紹介して、マスクやフェイスシールドなどを着用するのが難しい人たちがいることへの理解を求めています。

発達障がいがあってマスクが苦手なこどもにおすすめの対処法

これからも日常生活でマスクが必要な場面は残っていくでしょう。マスクが着用できないからといって、こどもであっても完全に着けずに済むことは難しい状況です。

そこで、親御さんがこどものマスク着用で試せる工夫をご紹介します。

その1.親御さんが普段からマスクを着けて過ごすようにする

マスクをする状態が当たり前であることを、親御さんが率先して伝える努力をしましょう。家のなかではマスクを外している家庭でも、親御さんが折に触れてマスクをする時間を増やしていきます。

例えば、できればマスクを着用するのが望ましい家事の場面であれば、それほど不自然ではありません。掃除をする、屋外で洗濯物を干す、といったシーンで親御さんのマスク姿を見せて、マスク着用が日常生活に溶け込んでいることを印象付けるようにします。

その2.マスクを着用する練習をする

いきなり外出時に長時間マスクを着け続けるのは困難です。そこで、家のなかのお手伝いや遊ぶシーンで、最初は数分からマスクを着ける練習をしてみましょう。

もしお子さんがすぐにマスクを取り外してもOKというスタンスで、無理に着け続けさせるのは避けてください。マスクを着用するのが目的ではなくて、あくまでマスクに慣れさせることがポイントです。そのため、練習回数が多かったり、あまりしつこく教え込もうとしたりすると、マスクそのものへの拒否感を強めてしまいかねませんので、注意してください。

肌ざわりに違和感のあるお子さんには、マスクを着用する前に顔に軽くベビーパウダーやスキンクリームなどを塗ってあげてみましょう。また、マスク着用時の息のしづらさが苦手なお子さんの場合は、飴やガムを食べさせたり、メンソールの香りをマスクの内側に少量付けたりして呼吸の爽快感をアップさえてあげましょう。

このほか、マスクの抵抗感を減らすため、お子さんが家族やお気に入りのぬいぐるみにマスクを着け外しを遊び感覚で一緒にやってみることもおすすめです。

その3.マスクを自分で選ばせる

お子さんのマスクを親御さんが選んでいる場合は、お子さんと一緒にお店に行って好きなデザインや柄、キャラクターなどのこども用マスクを買ってあげましょう

いくら親御さんがお子さんの好みやピッタリと思って買ったマスクでも、お子さん自身が選んだものには叶いません。自分の好みで選んだという体験があれば、たとえイヤイヤでもお子さんは着けなければならないと思うようです。

選ぶときは、1枚だけでなく気に入ったものを複数枚購入しましょう。デザインや生地、サイズなど、バラエティがあるほうが、お子さんもその日の気分や試しているうちに着けられるマスクがわかってくるからです。

その3.フェイスガードを利用する

マスクがどうしても苦手なお子さんには、肌に触れる面積が少ないフェイスガードを試してみましょう。

フェイスガードは耳ゴムのあたりだけ肌に直接触れるので、マスクの肌ざわりや呼吸のしづらさで困っているお子さんにはおすすめです。

そのうえ、フェイスガードは口周りが透明のため、マスクよりコミュニケーションが取りやすいのがメリットです。顔の表情を見ながらコミュニケーションができるため、マスク着用が当たり前となってから、相手との意思疎通でハードルが高まっていたこどもたちにもプラスになります。

その4.周囲に理解してもらう努力をする

発達障がいの度合いによっては、マスクの着用に断固拒否を示すお子さんもいます。そんなとき、マスクに慣れさせる努力と合わせて、保育園や奴、療育施設と話し合って、マスクを外したままでも過ごせないか、工夫をしてみましょう。

マスクを着用できないからといって、ずっと外出を自粛したまま成長期を過ごすことはできません。家庭とは違った外の環境でさまざまな刺激を受けることは、お子さんに豊富な経験を与えて、多様な価値観を育むために欠かせないことだからでです。

インターネットでは「マスクが着用できません」とプリントされたバッジが話題となっています。感覚過敏の強い発達障がいのお子さんのため、お母さんが「感覚過敏のためマスクを着用することができません。」というバッジを作って、周囲に理解を促す試みです。

こうしたバッジの動きに対しては、感染リスクを心配して、マスクができないなら外出をやめるべき、といった声もSNS上では見らます。しかし、感染状況を見極めながら、発達障がいのためにマスクを着用できないこどもたちも、安心してお出かけできる社会にしていくことは、大切でしょう。

まとめ:発達障がいのこどもがマスクが着けられないときどうする!?感覚過敏の障害特性を知ろう

ここまで見て来たように、発達障がいのあるこどもたちのなかには、感覚特性と呼ばれる特徴のためマスクの着用が困難な状態にある場合が少なくありません。とくに感覚過敏が強いお子さんは、短時間であってもマスクを着用はもちろんのこと、フェイスガードなど他の方法でも着けることが難しい場合もあります。

感覚特性には感覚過敏や感覚鈍麻といった、五感などの感覚が日常生活に支障をきたすほどのケースがあることがポイントです。感覚過敏は、訓練や治療で治るようなものではなく、あくまで少しずつ慣れさせることで、日常生活への影響を徐々に減らしていくのを目指すほかありません。

コロナ禍になってから、マスク着用が日常的な光景になって、発達障がいのこどもたちでマスクが苦手な場合、外出や通所・通学への困難度はますます高まっています。家庭でマスクに慣れる工夫を続けるのにプラスして、周囲の理解を得られるような試みをしていくことも大切です。

発達障がいのこどもたちがよく利用している放課後等デイサービス(放デイ)でも、マスクの着用が困難なお子さんが施設やスタッフの配慮を受けながら多く通っています。感覚過敏で困りごとのある親御さんは、お近くの放デイに相談するのもひとつの方法です。大阪のこどもプラス大阪でも、感覚過敏のあるお子さんへの発達支援に力を入れています。

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