発達障がいのこどもの医療費の目安は?診察や薬代、助成制度から障害者割引まで
発達障がいのこどもが病院やクリニックを受診するとき、どのくらいの医療費がかかるのでしょうか。
「うちのこどもは発達障がいかもしれない」と悩んだ場合、まず医療機関で発達障がいかどうか診察や検査で診断してもらうところからはじまります。
医療機関で発達障がいと診断されると、原則として医療費は健康保険が適用されます。
窓口で自己負担額はかかりますが、こどもを対象にした医療費助成制度なども整備されているので、ぜひ知っておきたいところです。
そこで今回は、自閉症スペクトラム症やADHD、学習障害といったこどもの発達障がいに関わる医療費のポイントを中心にご紹介します。
発達障がいの受診先は小児科・児童精神科・小児神経科
発達障がいかどうかを診断するには、医師による診察が必要です。
小児科や児童精神科、小児神経科をはじめ精神科や心療内科、発達外来などで相談を受け付けています。
このほか、小児科や精神科などに対応する総合病院や大学病院でも対応している場合があります。
都道府県や市区町村単位で発達障がいの診察が受けられる医療機関のリストを用意している自治体もあります。
地域の役所や保健所、こども療育センターなどで気軽に手に入るのでチェックしてください。
このほか、日本小児神経学会のホームページには、小児神経専門医や発達障がいの治療に携わっている医療機関や医師の情報を公開しています。
発達障がいの医療費は病院や患者によってさまざま
発達障がいの診察や検査、治療など、診療にかかる医療費は保険診療が原則です。
ただ、受診する病院やクリニック、こどもの状態によって検査や治療内容などが異なるため、具体的な金額はケースバイケースです。
医療費の内訳は、初診代や診察代、検査代などが中心です。
医師によって選ぶ検査内容や治療方針はさまざまですが、健康保険が使えるほか、自治体の小児医療費助成制度でカバーできます。
保険適用外の医療費がかかる場合もあります。
救命救急や入院病棟を持っている大病院に紹介状なしで受診したときは、診察代のほかに特別な料金がかかります。
また、保護者だけで前もって医療相談にかかったときや、受診中の医療機関のほかにセカンドオピニオンで別の医療機関に相談したとき、診断書や発達評価書などを病院で発行してもらうときも保険適用外で自費負担になる場合があります。
初めて発達障がいの相談をするときは、多めに医療費がかかるかもしれないと思っておくことをおすすめします。
また、受診を考えているクリニックや病院に医療費の目安を問い合わせておくと安心です。
発達障がいの医療費負担を軽減できる公的制度
発達障がいかどうか診断をしてもらう、その後の治療を受ける、などの場合、お住まいの自治体の助成制度や支援サービスを受けることができます。
主な制度やサービスには、次のようなものがあります。
1.こども医療費助成制度
市区町村単位の自治体ごとに実施されている小児医療費を助成している制度です。
こどもの通院や入院でかかった医療費の自己負担額を自治体が代わりに負担してくれます。
制度の内容は多少違いがあるものの、全国の自治体で行なわれています。
たとえば、東京都の場合、未就学児を対象にした乳幼児医療費助成制度(マル乳)や義務教育を受けている15歳までのこどもを対象にした義務教育就学児医療費助成制度(マル子)が整備されています。
どちらの制度も、こどもの入院や通院にかかる医療費の自己負担額を助成するものです。
クリニックや病院での診察代や検査代をはじめ、院内処方や調剤薬局の薬代の自己負担額もカバーしています。
発達障がいの診察や治療もこの助成制度が利用できます。
こども医療費助成制度を利用するには、お住まいの自治体に申請手続きをして、受給者証の交付を受ける必要があります。
なお、対象となる年齢や助成される医療費の範囲は各自治体で異なります。詳しくは申請先の役所の窓口で確かめましょう。
2.自立支援医療制度
18歳未満のこどもで知的障がいや発達障がい、その他の精神疾患を持つ場合、医療費の自己負担額が原則1割になる制度です。
ただし、世帯(この制度の場合は同じ医療保険に加入している家族)の所得状況に応じて月額負担上限額が設けられています。
1割負担になる医療費は、外来での診察や薬剤処方、デイケアや訪問看護などです。
自立支援医療制度も、お住まいの自治体に申請手続きが必要です。
制度の対象になるかどうか、受診している医療機関で確認してください。
3.療育手帳
18歳未満で発達障がいや知的障がいがわかったとき、自治体の児童相談所などで交付が受けられます。
自治体によっては交付の対象になる条件や運用方法が違うのがポイントです。
そのため、全国的には「療育手帳」と呼ばれる場合が多い一方で、東京都は「愛の手帳」、青森県は「愛護手帳」などとネーミングが異なります。
療育手帳があると、発達障がいに関する相談支援がスムーズに受けられるのが大きなメリットです。
また、自治体の外出支援サービスや生活支援サービスが受けられるのをはじめ、電車やバスなどの公共交通機関やテーマパーク、映画館など各種施設での割引、税金の減免などが受けられる場合があります。
4.精神障害者保健福祉手帳
身体障害者や知的障害者に交付される障害者手帳と同じような制度です。
自閉症スペクトラム症や学習障害、ADHD(注意欠陥多動性障害)、てんかんなどの発達障がいも精神障害に含まれます。
精神障害者保健福祉手帳の対象になるのは、精神疾患のための長期にわたって日常生活に何らかの支障をきたしている場合です。
本人の状態に応じて、次の3つの等級に分かれています。
▼1級「日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの」
障害者本人だけでは日常生活を送ることが困難で、常に援助が必要な状態です。
入院中であれば、多少の身の回りのことはできるものの、常時援助が必要なケースを指します。
また、在宅の場合は、外出するには付き添いが必要だったり、健康的な食生活や生活習慣、家事や金銭管理に援助が必要な人が対象になります。
▼2級「日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」
日常生活で常時援助が必要な状態ではないものの、自分から積極的に行動できない場合がある人。
生活習慣全般で一定の助言が必要な人が対象です。
通院やデイケア、作業所など、定期的な外出は一人でも可能なケースが多いです。
一方で、積極的に社会参加をしたり、大きなストレスをコントロールしたりするのは難しいケースが当てはまります。
▼3級「日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの」
十分とは言えないものの、日常生活で必要な家事や人間関係、社会参加がある程度本人だけでできる状態です。
作業所をはじめ保護的配慮のある事業所で働いている障害者も含みます。
状況に合わせて順序よく物事を進めるのは困難ですが、最低限の家事は可能です。
日常生活で起こりうるある程度のストレス程度では病気が悪化したり、再発したりするおそれはありません。
精神障害者保健福祉手帳の申請は、お住まいの市区町村役場に本人が手続きする必要があります。
入院中や本人による申請が難しい場合は、家族や入院先のケースワーカーや看護師が代行することもあります。
手帳があると受けられるサービス
精神障害者保健福祉手帳の交付を受けると、次のような手当やサービスを受けられます。
・生活保護の障害者加算
・特別児童扶養手当や障害時福祉手当などの受給
・居宅支援サービスや日中活動サービスなど障害者総合支援法の福祉サービス
・所得税や住民税の障害者控除や相続税、贈与税などの控除
・NTTや携帯電話、水道代の割引
・公共施設や娯楽施設の割引
・バスや電車など公共交通機関の割引
発達障がいのこどもが加入できる民間の保険はある?
こどもが発達障がいを持っているとわかったとき、民間の保険会社が加入できる生命保険や医療保険はあるのでしょうか。
民間の保険が利用できるかどうかは、今後治療でまとまった金額が必要な場合、医療費の準備に大きく影響します。
日本は「国民皆保険」のため、病気やケガをしたとき、国民健康保険や社会保険など公的医療保険制度で医療費の大半をカバーできます。
また、こどもであれば、医療費の自己負担額も自治体の助成制度があるため、15歳を過ぎる頃までほとんど医療費を支払わなくても済むしくみになっています。 そのため、ある程度の貯金があれば、もしお子さんが高額の治療費や入院費などが必要になっても、民間の個人保険に入る必要はあまりないとも考えられます。
保険会社の個人保険に加入するときには、審査を受けなければなりません。
生命保険や医療保険の場合、お子さんの健康状態を保険会社に伝える「告知」の義務があります。
万一、正確な健康状態を告知していないと「告知義務違反」になって、契約解除をされたり、もし毎月きちんと保険料を支払っていても保険金が給付されない場合があるので注意しましょう。
審査の対象になる病気や障害は保険会社や保険商品によって異なるため、パンフレットや公式ホームページで確認してみてください。
まとめ:発達障がいのこどもの医療費の目安は?診察や薬代、助成制度から保険や障害者割引まで
今回は、発達障がいを抱えるこどもの医療費についてご紹介しました。
発達障がいかもしれないと思って病院にかかる場合、基本的に医療費は健康保険が使えます。
また、自治体の小児を対象にした助成制度で窓口の自己負担額がかかるケースもほとんどありません。
このほか、発達障がいを含めた病気や障害を持つ人のための公的制度や福祉サービスが利用できるため、積極的に自治体の窓口で相談してみましょう。
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