発達障がいのこどもが増加している理由とは?(1)
「発達障がいのこどもが増加している」
「こどもの10人に1人は発達障がい」
「発達障がい」という言葉が社会に浸透するにつれて、発達障がいのこどもも増加していると言われる場合があります。
少子化でこどもの人口減少が心配される一方で、日本では実際に「発達障がい」のこどもはどのくらい増加しているのでしょうか。また、それにともなう行政や教育、医療の支援体制は変化しているのでしょうか。
そこで今回から3回にわたって、発達障がいのこどもの増加について紹介します。
発達障がいという言葉が身近になった今、データではどのような状況になっているのか、一緒に見ていきましょう。
2002年は発達障がい児6%
2002年、文部科学省は初めて発達障がいに関する全国調査を実施しました。「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調査」と呼ばれるアンケート調査です。
調査結果によると、2002年時点で医師の診断の有無にかかわらず、発達障がいの可能性を含めた児童は全国で約68万人、6.3%程度とされています。
10年後の2012年、再調査が行われたところ、小中学生のうち通常学級に在籍する生徒のなかで発達障がいの可能性があるのは6.5%でした。
当時、全国紙では「発達障害児『学級に2人』」(朝日新聞、2012年12月6日)と報じられるなど話題となり、社会的にも「発達障がい児6%」という認識が広がるきっかけとなりました。
特別支援学級の児童生徒は10年で2倍
文部科学省「学校基本調査」によると、特別支援学級に在籍している生徒は、2020年で約30万人。10年前の2012年で約14万人だったのに比べて、約2倍に増加しています。
なお、発達障がいと重複する「自閉症・情緒障害」の生徒もこの10年で約2.7倍になっていることがわかりました。
日本では、2001年から、それまで盲ろう学校や養護学校、特殊学校に分かれていた特殊教育から、特別支援教育に移行しました。合わせて、発達障がいのこどもに対しても特別支援教育で扱うこととなったことや、障がいのあるこどもも通常学級で学ぶ機会が増えた、など大きな変化をもたらしました。さらに、障がいの有無にかかわらず、こどもは地域の学校で学ぶ環境づくりが進められてきたこともポイントです。
2022年時点で発達障がい児は8.8%に
2022年12月に文部科学省が発表した調査結果によると、発達障がいの可能性があり特別な支援を必要とする小中学生は通常学級に8.8%在籍していることがわかりました。11人に1人の割合と推計されており、20年前の2012年の6.5%から増加しています。
増加した背景としては「これまで発達障がいと認識されていなかったこどもも把握できるようになった」「活字に触れたり会話をする機会が減少するなど、生活習慣や環境の変化が影響している」といった有識者会議の意見もあります。
まとめ:発達障がいのこどもが増加している理由とは?(1)
国の調査からわかるように、発達障がいのあるこどもは増加傾向にあります。
発達障がいの可能性があり特別な支援を必要とする小中学生は、2012年時点で通常学級に6.5%、10年後の2022年には8.8%と推移しました。
その間、特殊支援教育のスタートや社会で発達障がいの認識が広がるなど、発達障がいを取り巻く環境も大きく変化しています。
そこで、次の2回目の記事では、発達障がいはどのように診断されるのか、また「グレーゾーン」と呼ばれる状態について紹介します。
コメントを残す