発達障がいのあるこどもは運動が苦手?発達性協調運動障がい(DCD)とは
発達障がいのあるこどもの数10%に見られる発達性協調運動障がい(DCD)。発達に偏りのあるこどもたちは、運動面でも体の使い方やスキルが伸びづらい場合が多く、体育の授業や部活で失敗をしやすいといわれています。運動が苦手なことに加えて、正しい姿勢をキープしづらい、転倒しやすいなど、日常生活にも支障をきたす場合があり、注意が必要です。
発達障がいのある子どもさんを持つ親にとって、こどもの運動能力は日常生活はもちろんこどもの体力や自信にも影響する困りごとといえるでしょう。
そこでこの記事では、発達障がいのあるこどもと運動について、発達性協調運動障がいをキーワードに紹介します。
発達性協調運動障がい(DCD)とは
発達性協調運動障がいとは、発達障がいに含まれる特性です。神経発達症のひとつで、英語の「Development Coordination Disorder」を略して「DCD」と呼ばれることもあります。最近、発達支援や療育の分野でも注目されるようになりました。
発達性協調運動障がいは、運動面の発達に障がいが起きる特性です。知っておきたいポイントは、自閉症スペクトラム障がい(ASD)やADHD(注意欠陥多動性障がい)、LD(学習障害)の傾向があるこどもに見られやすいこと。つまり、広く発達障がいは脳の機能の偏りに加えて、運動機能の偏りも生まれやすい傾向が見られることが最近の研究でわかってきました。
知的障がいはないが発達障がいと併存しやすい
発達障がいと診断された、もしくはグレーゾーンの疑いがあるこどもたちは、発達性協調運動障がいも持ち合わせているケースが少なくないことが重要です。
なお、発達性協調運動障がいは、知的障がいは見られなく筋肉や神経、視覚や聴覚といった運動機能に目立った異常は見られません。知的能力には問題がないものの、乳幼児期から年齢に比べて日常生活の協調運動がうまくおこなえない状態が続きます。
「運動神経が悪い」と言われていた原因かも
小学校に上がって体育や部活がスタートすると次のような傾向が目立つようになります。
・鉄棒や跳び箱、なわとびといった器械運動が苦手
・鬼ごっこで逃げてもすぐに捕まる、または鬼の役になると捕まえられない
・サッカーや野球などグループスポーツで肝心な場面でプレイを失敗してチームメイトから非難される
こどものころ「運動神経が悪い子」として仲間はずれにされていたり、親や先生からも片付けられていたりしていたこどもたち。実は、その裏に発達性協調運動障がいが隠れていた可能性が高いと考えられます。
お友だちとの運動やスポーツを通して、成功体験ができないまま疎外感を覚え続けると、こどもたちは運動面での自信をなくしたり、新しいことに挑戦しようとするモチベーションを失ったりしていきます。こどもにとって運動ができることは、仲間から認められる大きなポイントになるので、小学生以上の学童期のこどもたちにはその後のメンタルに大きな影を落とす問題といえるでしょう。
発達性協調運動障がいは小学校低学年で目立ち始める
発達性協調運動障がいの特徴は、発達障がいと同じように学校の先生が気づくことも多く見られます。
まず、運動には大きく分けて粗大運動と微細運動に分けられます。おおざっぱに説明すると、粗大運動とは姿勢を維持する、運動やスポーツをするときに使う運動能力です。一方で微細運動とは日常生活の動作や勉強、作業、家事などで主に手先の器用さが求められる運動のことです。
発達性協調運動障がいがあるこどもの場合、授業中や体育、部活などで次のような症状が目立つようになります。
▼粗大運動
・きれいな姿勢で座り続けられない
・転倒しやすい
・なわとびが苦手
・ドッジボールでタイミング良くボールを投げたり、長なわとびでうまく入ったりできない
・短距離走で途中から加速がしづらい
・踏ん張る、力を入れて押す・引くといった運動ができない
・リズムに乗ってダンスが踊れない、振り付けが覚えられない
・水泳で泳ぎ方を覚えても前に進まない
▼微細運動
・箸を使うのが下手でスプーンやフォークで食べる
・食事中に口から食べ物をこぼすことが多い
・ノートのマス目や罫線に合わせて文字が書けない
・プリントや折り紙がきれいに折れない
・リコーダーで運指が複雑になると演奏できなくなる
・コンパスや分度器、ものさしなどの勉強道具の扱いが苦手
▼メンタル面
・運動やスポーツだけでなく普段から自信がなくて引っ込み思案
・新しいことに挑戦しようとする意欲がわかない
・臆病でおとなしい
・学校では一人になりがち
・体育のような運動がメインの科目だけでなく五教科などの勉強の成績が落ちる
このように、発達性協調運動障がいの特性が強くなると、運動面やメンタル面で症状が現れて、学校生活や日常生活にも暗い影を落とすようになります。
発達性協調運動障がいの二次的な問題
発達障がいの分野では、最近「二次障がい」が注目されています。一次障がいの発達障がいがきっかけで、うつ病やパニック障害、引きこもり、不登校といった内在化障がいや、暴力や反社会的行動などの外在化障がいが現れるものです。
発達性協調運動障がいでも、そのまま放置していると二次障がいに当たるさまざまな問題が起きやすくなります。学校生活や日常生活で次のような症状が現れることがあります。
・不登校気味で学校を休みたがる
・学校を休んでも午後から元気になる
・朝が弱く遅刻が目立ったり、親が来るまで送迎したりしている
・表情がない、笑顔がない
・いつもイライラしていて些細なことで癇癪を起こす
・自宅に居るといつも憂うつな表情で元気がない
・親子げんかや兄弟げんかが多い
・同級生とのトラブルや非行などで学校から呼び出されることがある
こうした学校生活に関する困りごとを、精神的に未熟だから、気持ちがたるんでいるからと、頭ごなしに叱ったり、無理矢理解決しようとしたりする親御さんが少なくありません。ただし、原因がわからないまま症状だけ治そうとしても、根本的な解決に至らないのが実情です。
協調運動をサポートして発育につなげるために必要なことは?
学校や家庭で「運動神経が悪い」と片付けられてきた発達性協調運動障がいですが、運動面で気になることがあれば早めに見つけて適切な支援をおこなうことが大切です。
できるだけ早くサポートをスタートすると、日常生活で大切な協調運動の働きがアップして運動やスポーツでの苦手意識をやわらげる効果が期待できるからです。
協調運動が苦手なこどもたちは、次のようなステップで発達支援の角度からサポートします。
ステップ1.お子さんの発達性協調運動障がいの状態を把握する
それぞれの身体部位が複雑に協調しながらひとつの運動をおこなうことが協調運動の特徴です。そのため、こどもによってどの身体部位との連携が苦手なのかパターンがさまざまなので、一人ひとり丁寧に体の使い方や苦手な運動を観察して傾向を把握することから始まります。
放課後等デイサービス(放デイ)のなかで、運動プログラムを取り入れている施設では、親御さんからこどもの運動に関する情報をヒアリングしたり、実際にこどもに運動や遊びをしてもらって感覚統合の状態や問題点をはじめメンタル状況やコミュニケーションスキルを評価します。
ステップ2.アセスメントをおこなう
アセスメントとは、お子さんの情報から評価や解釈をして、こどもの内側で起こっている感覚統合の発達の偏りを見極める作業です。これまでの評価に基づいて、運動が苦手なのはなぜか、その原因を深く探ります。
ステップ3.個別支援計画を作成して運動療育を開始する
アセスメントの内容を親御さんに共有します。親御さんの希望や意見を盛り込みながら、運動療育を実施するための個別支援計画を作成。放課後等デイサービスで実際に運動遊びを通して症状の改善を目指します。
具体的には平均台でバランス能力を養うのをはじめ、ボール遊びで相手との位置関係を判断する定位能力など、さまざまな運動遊びで協調運動に関わる感覚統合の発達を促します。
また、放課後等デイサービスの運動療育は、スタッフや仲間たちのコミュニケーションによって、心の成長の期待できることがメリットです。
まとめ:発達障がいのあるこどもは運動が苦手?発達性協調運動障がい(DCD)とは
発達性協調運動障がい(DCD)は、自閉症スペクトラム障がい(ASD)やADHD(注意欠陥多動性障がい)など発達障がいのあるこどもたちに併存するケースが多い発達障がいのひとつです。
まだまだ一般的に認知度が低いため、学校や家庭では「運動神経が悪い」といわれてメンタル的なダメージを抱えたまま成長するこどもたちが多く見られました。
しかし、最近では小さなうちから運動療育を活用して協調運動の成長を目指すと、日常生活動作が改善したり、運動やスポーツの苦手意識が軽減したりすることがわかっています。
とくに発達支援の現場である放課後等デイサービス(放デイ)では、発達障がいのあるこどもたちの心身の発達支援に運動療育を取り入れていている例が多く見られます。例えば、吹田のこどもプラス大阪では柳澤秋孝先生、柳澤弘樹先生で知られる柳沢運動プログラムを導入。『脳を育て心を育てる』をモットーに、こどもたちの運動能力の発達や、メンタル面やコミュニケーションスキルを鍛える試みを続けてきました。
「うちの子も発達性協調運動障がいかもしれない」
「なにか運動が得意になれる方法はないだろうか」
そんな困りごとを抱えている親御さんがいたら、是非一度柳沢運動プログラムで実績にあるこどもプラス大阪までご相談ください。運動と脳の発達の関連性をはじめ、お子さんの状態に合わせたアドバイスをします。
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