発達障がいのこどもの「あまのじゃく」とどう付き合えばいい?②
前回は、「あまのじゃく」な言動をする子どもの特徴についてご紹介しました。
1歳半から3、4歳のイヤイヤ期によく現れる「あまのじゃく」な子どもたち。
発達障がいを抱えるお子さんの場合は、年齢が上がっても親と正反対のことをいったり、何かにつけてやらなければいけないことを拒否したり、世話をする親御さんも大変な苦労があることでしょう。
それでは、「あまのじゃく」な言動を繰り返す子どもたちに、どう接すればいいのでしょうか。
今回は、発達障がいのお子さんの「あまのじゃく」な言動への対処法をご紹介します。
まず心理学的に「あまのじゃく」の理由を知っておこう
こどもの頃、これから勉強しようと思っていたときに限って、親が「ちゃんと宿題したの?」と聞いてきて、やる気を失った、なんてことはありませんでしたか。
人は、もともと自分がこれから行動しようとする意思を改めて他者に指摘されると、急に意欲を失ってしまうことがあります。
また、買い物が決まっていてお店を訪れたのに、店員から強くセールスをされてしまい、買う気を失ったり、他の店で買いたくなったりすることは、大人でも経験があるでしょう。
他者から強く説得を受けると、かえって拒否したり、抵抗したくなる、という心のしくみを「心理的リアクタンス」と呼びます。
本来、誰でも人間はどんな些細なことであっても、自分がすべて決めて行動したい、自由に振る舞いたい、という生き物です。
そのため、仮に宿題や仕事といった、自分がしなければならないことであっても、親や先生、他人から「やりなさい」と迫られると、自由に生きていたいという欲求を抑圧される気持ちになって、抵抗してしまうのです。
自由を制限されるかもしれないという恐れが、「あまのじゃく」のような親のいうことと正反対のことをいったり、やったりする行動につながります。
本人が自由に決められる選択肢を残しておくこと
「あまのじゃく」な行動や言葉がふえるイヤイヤ期の発達段階にある発達障がいを持つお子さんには、本人自身がこれからやろうとする行動を選択したという方向へと自然なかたちでリードしていくのがポイントです。
親が何気なく「早く着替えなさい」「さっさと食べなさい」といって指示を出すと、余計に子どもの反抗心をあおってしまいかねません。
そこで、こちらが用意した選択肢をまず伝えて、どちらをするのか、本人に選ばせるのがコツです。
心理学では選択話法や二者択一話法などと呼ばれていて、営業トークで昔からよく利用されています。
朝のしたくをしているBくんの場合
お母さんが「早く着替えなさい」「朝ご飯たべて!」と何度も伝えても、どんどん「あまのじゃく」になってやろうとしないBくん。
しつこくしたくを促せば促すほど、反抗的になってしまいます。
「着替えたくない!」
「朝ご飯、要らない」
そう、へそを曲げてしまっていました。
そこで、Bくんのお母さんは、
「着替えを先にする? それともご飯が先がいい?」
というふうに、朝のしたくでやらなければならない2つの選択肢をまずBくんに伝えて、本人が選ぶというかたちを取ることにしたのです。
親からすれば、着替えを先にしても、朝ご飯を先に食べても、朝のしたくのスピードや出かける時間に大きな違いは生まれません。
ただ、本人にとっても自分の意思で選択したという錯覚が生まれるため、スムーズに行動に移ってもらえる可能性が高くなります。
お子さんに何かしてもらいたいときは、一方的に「これをしなさい」と本人を追い込まないことが何より大切です。
それよりも、いくつかの選択肢を提示して、本人に選ばせるように持っていくアプローチを心がければ、ずいぶん「あまのじゃく」な言動が減るだろうと期待できます。
褒められると急にやる気を無くすCさんの場合
Cさんは、お母さんの家事の手伝いが好きな女の子です。
しかし、ときどき、家事について「あまのじゃく」を発揮することがあって、ビックリさせられてしまいます。
ある日の夕飯が終わって、Cさんは食器を台所まで持っていって行きました。
洗おうとしたとき、お母さんは「いつもありがとう!えらいね」と褒めてあげたのですが、突然Cさんは不機嫌になってかんしゃくを起こしたのです。
褒めてあげると普通は喜ぶものですが、Cさんの心の内では「せっかく自分がやろうとしているのに、褒めてもらうと、期待されているようで息苦しくなる」という感情が湧いています。
褒めることは療育に限らず子育ての基本です。
しかし、お子さんや声掛けのタイミングによっては、「いつもありがとう。次もよろしくね」というような期待感を子どもに背負わせてしまう場合があります。
そのため、「あまのじゃく」な言動を取りがちなお子さんによっては、「自分の意思ではなく、他者からの指示や期待でやらせれる」という義務的なものになってしまうのです。
だからといっても、まったく褒めないほうがいい、というわけではない、のが発達障がいのお子さんと接するときの難しさでしょう。
誰でも、何か自慢できるようなことを達成したら「褒めてもらいたい!」「褒められてうれしい!」という感情は湧いてきます。
その子どもの特性や性格、その場面の状況を観察しながら、使い分けることが大切です。
まとめ:発達障がいのこどもの「あまのじゃく」とどう付き合えばいい?②
大人も子どもも、何かをやろうとして他者から指示されていると感じると、やる気を無くしたり、つい反抗したくなったりする心理が働きます。
一方的に決めつけて指示するのではなく、選択肢をいくつか用意して子ども自身に選ばせるスタイルを取り入れるようにすれば、「あまのじゃく」な行動や態度を和らげることができるでしょう。
また、いつでも褒めるのがいい、とは限りません。お子さんの気持ちになって、お子さんがやらされている思いを感じてはいないか、期待を掛けるような言葉を使っていないか、日頃からセルフチェックしてみてください。
こうした「あまのじゃく」な子どもに対する接し方や、声掛けの仕方は、学校の先生や放課後等デイサービス(放デイ)のスタッフさんにアドバイスを受けるのもおすすめです。
とくに日頃から、学校や放デイでのお子さん本人の様子を聞いて、親子の関係では見えづらい子どもの隠れた特性や性格、気持ちをキャッチしていきましょう。
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