発達障害のこどもの判断基準とは?症状や診断方法を知ろう①
発達障がいは、生まれつき脳の働きに偏りがあるため、日常生活でさまざまな支障が起きる障がいです。本人の能力や興味関心に凸凹が多いため、生活環境や人間関係によって社会にうまく溶け込めず、日常生活で困りごとを抱えたまま暮らすケースが多く見られます。
しかも、発達障がいは人からわかりづらく、しつけや教育のせいと考える人も少なくないため、余計にコミュニケーションでつまづきやすい問題です。
発達障がいと診断されるまで、自分のお子さんでも性格上の問題と考えている場合も少なくありません。「しつけや育て方に問題があったからわがままや自分勝手に育った」とか「どれだけ教えても時間を守れない、忘れ物が多い」など、悩み事を抱えている親御さんも多いことでしょう。
そこで今回の記事では、発達障がいのこどもの判断基準を医学的な診断基準を使って見ていきます。それぞれの発達障がいの特徴や症状、診断方法のポイントを知って、お子さんの対応で工夫ができるところはないか、一緒に考えていきましょう。
発達障がいの定義とは
日本の場合、発達障がいは2004年施行の「発達障害者支援法」で定義されました。
文部科学省によると、発達障がいの定義は以下の通りです。
発達障害とは、発達障害者支援法には「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義されています。
その内容は、WHO(世界保健機関)の『ICD-10』の判断基準に基づいています。
代表的な3つの発達障がいと特徴
「急にパニックになってかんしゃくを起こしてしまう」
「こだわりが強くて、頑固だ」
「気持ちがうまく切り替えられない」
「人とのコミュニケーションでつまづきやすい」
このような悩みごとがある場合、お子さんは発達障がいの可能性があります。
発達障がいには、主に自閉症スペクトラム障がい(ASD)、ADHD(注意欠如・多動性障がい)、学習障がい(LD)の3つが知られています。
ぞれぞれ簡単に特徴を押さえておきましょう。
1.自閉症スペクトラム障がい(ASD)
自閉症やアスペルガー症候群を医学的にまとめて自閉症スペクトラム障がいと呼ばれるようになりました。ASDという英語の略称で呼ばれることも多くあります。
自閉症スペクトラム障がいの特徴は、コミュニケーションや人間関係でつまづきやすい、こだわりが強く同じことを繰り返す、といったものです。
WHO(世界保健機関)や精神医学で権威のあるDSMと呼ばれる診断基準によると、かつて自閉症やアスペルガー症候群は広汎性発達障がいに含まれていました。2013年、「DSM−5」によって自閉症という障がい名が消えた代わりに、「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」にまとめられたという経緯があります。
2.ADHD(注意欠如・多動性障がい)
ADHDは、不注意・多動性・衝動性の3つの要素で構成されている障がいです。集中力が続かない、じっとしていられない、突破的に思いつきで行動してしまう、といった傾向が、人によってそれぞれ強い弱いがあるのが特徴です。
2013年刊行の「DSM−5」によって、「注意欠陥・多動性障害」から「注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害」に診断名は変更されました。しかし、一般的には現在も「注意欠陥・多動性障害」と呼ばれています。
3.学習障害(LD)
知的障がいはないが、基礎的な学習能力に困難が生じる障がいです。主に、読む・書く・聞く・話す・計算や推論する、といった分野で支障をきたすため、学習についていけなくなります。
読む力で問題が生じる場合はディスレクシア(読字障害)、書く力の場合はディスグラフィア(書字障害)、計算・推論する能力の場合はディスカリキュリア(算数障害)と細かく分かれます。
なお、2013年に刊行された「DSM-5 」では「学習障害(LD)」から「限局性学習症/限局性学習障害(Specific Learning Disorder)」と診断名が変更されました。
発達障がいの判断基準を使って誰が診断する?
発達障がいかどうか、診断できるのは医師だけです。そのため、発達障がいかもしれない、その疑いがあるグレーゾーンの可能性がある、といっても、あくまで「発達障がいの傾向が見られる」というだけで、医学的に正式な診断を受けているかどうかはまた別の問題となります。
発達障がいの疑いがある場合、小児神経科や心療内科、発達外来などの専門医の診察や検査を受けて、診断が下ります。
医師は、問診や行動観察、心理検査や発達検査などの結果を総合的に判断するのがポイントです。とくに医学的な診断基準として使われている、『DSM-5』や『ICD-10』といったマニュアルに沿って、日常生活の困りごとを比較しながら診断します。
現在、発達障がいの診断は幼児期以降になってからでないと判断できません。出生前診断が飛躍的に進歩しているものお、羊水検査や血液検査、エコー画像などで生まれる前はもちろんのこと、生まれてから遺伝子検査や血液検査をしてもある程度の年齢になるまで医学的に発達障がいと診断できないのが現状です。
まとめ:発達障害のこどもの判断基準とは?症状や診断方法を知ろう①
発達障がいは、自閉症スペクトラム障がい(ASD)、ADHD(注意欠如・多動性障がい)、学習障がい(LD)の3つが代表的な種類です。アメリカの精神医学会による『DSM-5』やWHO(世界保健機関)による『ICD-10』の診断基準に従って、日本でも医師が総合的に診断しています。
次回の記事では、発達障がいの診断を受けるべきかどうか、具体的な診断方法にも触れながらご紹介します。
コメントを残す