発達障がいのこどもは人懐っこい?誤解されやすいADHDの症状とは②
前回の記事では、発達障がいの種類と特徴、とくにADHDで人懐っこいこどもが多いことについてご紹介しました。
たしかに、発達障がいのこどものなかには人懐っこい性格を見せる場合があります。人懐っこいこどもは周囲の大人やお友だちからかわいがられるため、そのこどもの長所といってよいでしょう。
しかし一方で、ADHDの特性が強く出ると、コミュニケーションがうまくいかなくなって、大人に対しては反抗的に見える、こども同士では相手の気持ちやルールがわからず溶け込めない、といったネガティブな傾向が現れることがあります。
人懐っこい傾向が特徴のひとつといわれるADHDとはどのような発達障がいなのでしょうか。その他の発達障がいと比較しながら、押さえておきましょう。
発達障がいには主に3つのタイプがある
「発達レベルにズレがある」
「同じ年齢のこどもに比べて、上手にできないことが多い」
こうした日常生活に支障をきたす状態を発達障がいと呼んでいます。以前、発達障がいのうち自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障がいなどいくつかの呼び方がありましたが、自閉症スペクトラム症(ASD)とまとめて呼ばれるようになりました。このほかにも学習障害(LD)やADHD(注意欠陥多動性障害)といった種類が知られています。
ここからは、それぞれの発達障がいの種類について具体的に見ていきましょう。
1.自閉症スペクトラム症(ASD)
一般的に発達障がいと言うと、この自閉症スペクトラム症をイメージする人が多いのではないでしょうか。世間が思い浮かべる発達障がいの傾向にもっとも近いのがASD、自閉症スペクトラム症です。
自閉症スペクトラム症の特徴は主に次の3つあります。
・人との心のふれあいが難しい(社会性の問題)
・人との言葉ややりとりが難しい(コミュニケーションの問題)
・こだわりが強い、気持ちの切り替えができない(想像力の問題)
1)社会性の問題
こどものなかで、視線が合いづらくアイコンタクトが取れない、表情が乏しく何を考えているのかわからない、といった特徴のあるお子さんはいませんか。
自閉症スペクトラム症のこどもは、人への関心度が低いため、人見知りや後追いをしない、ひとり遊びを好み、自分の好きなおもちゃや遊び方でずっと遊んでいる、人を物であるかのように接してしまう、といった特徴があります。
また、相手の気持ちや表情を読み取ったり、その場の空気に合わせて対応するのが苦手なので、一方的に自分が伝えたいことだけをのべつ幕なしにしゃべりかける、その場の空気やTPOに関係ない言動を取ってしまう、といった問題行動が現れやすくなります。
2)コミュニケーションの問題
言葉の遅れがあるかどうかは自閉症スペクトラム症を考えるとき大きな判断基準になります。言葉がうまく身につかない、操れないことはもちろんですが、身振りや手振り、気持ちを表情にうまく出すなど、ボディーランゲージもまた不得意です。
また、人とのコミュニケーションでオウム返しをする、同じパターンの表現ばかりよく使うことも多く見られます。
一方で、言葉をそのまま受け取ったり、年齢に比べて難しい表現や堅苦しい言葉使いをしたりするこどもも少なくありません。
コミュニケーションスキルを含めたソーシャルスキルがうまく身につきづらいため、お友だちが上手に作れない、人間関係を維持しづらいために周囲と孤立していくこどもさんも現れます。
3)想像力の問題
興味や関心が偏る、同じことを繰り返しやるのも、自閉症スペクトラム症の大きな特性のひとつです。
こどもによって、鉄道にばかり興味を示したり、洗濯機が室外機などくるくると回るものを探し回ってじっと見続けたりします。
また、同じ動きを一人で楽しむ、水道の蛇口や水たまりを見つけるとずっと水遊びをしているなど感覚遊びが大好きです。常道反復行動と呼ばれるもので、こうした遊びをいつまでも続けるこどもさんもいます。
集団生活で大きな壁になるのは、気持ちの切り替えがうまくできないことでしょう。場面の切り替えも苦手です。遊びの時間から勉強の時間への切り替えができずに、ずっと遊びたがってパニックになるケースが多く見られます。
また、集団生活のなかで、融通が利かないため周りの大人やお友だちに約束事やルールの面で厳しく当たることも珍しくありません。
ここまでご紹介した3つの特徴は、こどもさんによってどの特性が強く現れるか、いくつ見られるか、異なります。こどもの発達段階や個性はそれぞれ違いがあるため、はっきりと区別できるわけではないことを知っておきましょう。
2.学習障害(LD)
知的障害はほとんど見られないものの、読み書きや計算など基本的な学習能力のうち、ある特定の分野だけ極端にうまくできません。
江戸時代の寺子屋で「読み書きそろばん」という言葉がありましたが、その能力で支障が出てしまう発達障がいです。
読む、書く、話す、といった国語力やコミュニケーションスキルに関わる分野のほか、計算や推論するといった数学や数的理解、合理的な考えといった分野がうまくできないこどもさんもいます。
専門的には読字障害や書字障害、算数障害などと区別して呼ばれることもあります。
3.注意欠陥多動性障害(ADHD)
小学校に入学して本格的な集団生活やこども同士の人間関係がスタートするとADHDの傾向のあるこどもは困りごとが増えていきます。
ADHDには次の3つの大きな特徴があります。
・不注意
・多動性
・衝動性
たとえば、こうした特徴をもつこどもさんがADHDの代表例です。
・じっとしていられない
・すぐに手遊びやキョロキョロする
・授業や話に集中できない
・ケアレスミスが多い
・忘れ物が多い
・人懐っこいのでかわいがられる
・イタズラをしても憎めないタイプ
・興味や関心のあることにはとことん集中する
・ひらめきが多く突発的に行動する
こうした特徴は、さまざまな組み合わせがあるため、どんなADHDのこどもさんにもピッタリ当てはまるというわけではありません。
とくに「人懐っこい」「憎めないタイプ」というのは、一般的に人にとって長所ともいえる特徴なので、症状と見るかどうか難しいところです。しかし、とても人懐っこいこどもなのに、遊び始めると急に乱暴になって、すぐに手が出たり、イタズラやケンカをしても憎めないタイプで何となく周りのこどもや大人たちが許してしまう、といったケースが多くあります。
このように、人懐っこいというADHDの特性は、そのこどもさんの大切な性格や個性でもあるため、本来の発達レベルで出てきている特徴なのか発達障がいの影響なのか、慎重に考える必要があるでしょう。
まとめ:発達障がいのこどもは人懐っこい?誤解されやすいADHDの症状とは②
発達障がいには、自閉症スペクトラム症(ASD)、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)の3つのタイプが知られています。
そのうち、ADHDのこどもは人懐っこいという特徴を見せる場合が多く、周りからかわいがられて過ごす場合も多く見られます。ただし、ADHDの他の特性である多動性や衝動性といった傾向が強く出てしまうと、お友だちにすぐ手を出してトラブルになる、コミュニケーションでつまづいて友人関係がうまく維持できない、といった状態に陥るこどもさんも少なくありません。
次回の3回目の記事では、ADHDの治療やよく似た病気や障がいについてご案内します。
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