発達障がいのこどもは怒られても笑顔なのはなぜ?叱られても笑ってしまう理由と対処法
発達障がいのこどもは笑顔がふさわしくないシーンで笑ってしまい、相手を誤解させてしまったり、トラブルになったりすることがあります。
そこでこの記事では、発達障がいのこどもと笑顔の関係を中心に、発達支援の視点から次のポイントについて説明します。
- なぜ発達障がいのこどもは怒られたときに笑顔になるのか
- 笑顔でトラブルになりやすい発達障がいの種類とは
- どのように親として接すればいいのか
発達障がいのこどもが笑顔という感情の表現でつまづきやすいポイントを一緒に見ていきましょう。
叱られているのに笑顔になるこどもたち
発達障がいのあるこどもたちのなかに、叱られているときでもニコニコ笑ってしまうこどもがいます。
怒られているとき、叱られているときに笑顔を見せていると、怒る側からすれば「バカにしている」「ちゃんと真剣に話を聞いていない」などと感じてしまい、余計に怒りが増してしまうこともしばしばでしょう。
なぜ、怒られているのにヘラへラ笑って笑顔になってしまうのでしょうか。
一般的な対人関係であれば、反抗心や不真面目な気持ちを顔の表情で表現していると捉えられるはずです。
しかし、発達障がいのこどもは、自分の思いと感情表現とにズレることが多く、こども自身はその気がなくてもまったく異なる表情をしてしまいます。
言葉の発達の遅れやコミュニケーションスキルが身につきづらいといった発達障がいの特性によって、怒られたときにも笑顔で反応してしまうのです。
感情表現のズレはなぜ起こる?
Aくんはお母さんから叱られているときに、いつもニコニコ笑顔になってしまいます。
なぜ怒られているのに笑ってしまうのか、具体的に次の4つの理由が考えられます。
- 相手が怒っていることがわからない
- なぜ怒られているのかがわからない
- 防衛反応のため笑顔になっている
- 気持ちと感情表現とがズレている
以下で、ひとつずつ具体的に見ていきましょう。
1.相手が怒っていることがわからない
人の怒り方にはいくつかのパターンがあります。
大きな声で今に手が出るような勢いで怒る場合もあるでしょう。一方で、普段の口調でこんこんと言い含めるようなやさしい叱り方をすることも少なくありません。
発達障がいのあるこどもは、相手の気持ちを読み取ったり、言葉の裏に隠された真意を理解したりするのが苦手です。そのため、怒鳴り声で明らかに感情的に怒っているとわかる場合でないと、相手が怒っているかどうか、気づかない場合があります。
目の前で相手が怒っている行動と、自分とは関係が無いと思っているので、怒られていること自体がわからないのです。
2.なぜ怒られているのかがわからない
相手が怒っている、自分が叱られていることは気づいても、なぜ怒られているか理由が理解できないことがあります。
例えば、怒られることをした言動そのものを忘れてしまっていたり、早く怒られている状態から抜け出したくて適当に答えてしまう、といったこともありがちです。
発達障がいのあるこどもからすれば、自分は怒られることを忘れていて「そんなことあったかな?」と感じているのに叱られ続けるので、そのちぐはぐな状態についニタニタ笑顔になってしまいます。
3.防衛反応のため笑顔になっている
人は相手からの攻撃を防ぎたい、その場しのぎでもこの状況を切り抜けたいと思ったとき、心の防衛反応が働いて笑顔になることがあります。
発達障がいのこどもは、感情的な波風が立つことに敏感な場合が多いです。自分が怒られていなくても、近くで怒鳴り声が聞こえるだけでおびえてしまうこどももいます。
また、相手は軽く注意した程度のつもりでも、誰かに怒られたという体験をこどもの中で増幅させてしまって、激しく怒られたと感じてしまうケースもあります。
過去にニコニコ笑顔でいるとその場が収まった体験があり、自分の身を守りたいために笑ってしまうこどももいるでしょう。
4.気持ちと感情表現とがズレている
叱られていることに気づいて、「悪かったな」と反省していても、その気持ちと実際に表現する言葉や表情がズレているケースがあります。
反省している気持ちを表そうとしているのに、笑顔を見せるといった誤った感情表現を覚えているパターンです。
また、叱られているという体験を強く感じ取り過ぎて、頭の働きが停止してフリーズ状態になっていることもあります。
思考や感情がストップしていると、無表情になるほか、本人の意思と関係なくひきつった笑顔やニヤニヤ笑ってしまうことがあるのです。
軽いショック状態ではこども自身もどういった表情をしているかわかりません。しかし、「なぜ笑っているの!?」とさらに怒られてしまうケースがあり得ます。
怒られているのに笑顔になってしまう特性を持ち続けたまま成長すると、学校生活や社会生活の対人関係でトラブルが起きたり、コミュニケーションがうまく取れなくなったりする可能性が高くなります。
そのため、自閉スペクトラム症やADHD(注意欠陥多動性障がい)のこどもとの接し方を工夫して、学校や社会で過ごすとき円滑な対人関係を築けるサポートが必要です。
笑顔は発達障がいに気づくサイン?
発達障がいの種類によっては、笑顔があるかどうか、あまり笑わないかといった症状が発達障がいを見つけるサインになることがあります。
発達障がいには主に以下の3種類があります。
- 自閉スペクトラム症(ASD)
- ADHD(注意欠陥多動性障がい)
- 学習障がい(LD)
このうち、ASDは乳幼児のうちから発達のしかたに偏りが見られるケースが多いタイプです。
- 言葉の話し始めが遅い
- 大人の視線や指さしに興味を示さない(共同注意)
- 不安な時にも親を振り返って確認しない
- あやしても笑顔にならない
とくに生後しばらくしてから発達する、視線や指さし、表情といった言葉によらないコミュニケーションが苦手なこどもが多いのが特徴です。
よって、小さい頃から笑顔が乏しい、笑い返さないといった特徴を持っているこどもは、乳幼児健診などで自閉スペクトラム症(ASD)の可能性を指摘される場合があります。
【参考】アンジェルマン症候群
重い知的障がいを伴うアンジェルマン症候群は、ちょっとしたことでよく笑うといった笑顔の特性があります。
15,000人に1人の割合で生まれ、難病に指定されている病気です。てんかんや動きのぎこちなさをはじめ、顎が尖っていて口が大きいなどの身体的な特徴も見られます。
些細なことでもすぐに笑ってしまうほか、落ち着きがない、好奇心が旺盛、水やビニールなど光輝くものが好き、といった発達障がいにもよく見られる特性を持っています。
乳児期の後半から発達の遅れが見られるケースが多いため、発達障がいとあわせて知っておきたい病気です。
ソーシャルスキルトレーニングでこどもに経験を
発達障がいのこどもは、自分が怒られているのか理解できていないケースが多くあります。そのため、大人がどういった態度で接したときに怒られているのか、そのときに適切な態度や表情、言葉遣いは何かといったポイントの指導が大切です。
相手が怒った顔をしたときは「ごめんなさい」といったり、笑顔はいけない、といった社会性を身につけさせるようにしましょう。
最初は叱られているか気づかないことが多いため、怒っているときに「こういうときは『ごめんなさい』っていおう」と具体的な行動や表現を教え込むことも必要になります。
また、イラストや写真を使って、相手が怒っている様子を覚える工夫をしたり、ロールプレイングを通して人はどういったときに怒っているのか、その後どういう態度を取ればいいのかを学ぶ機会も提供しましょう。
こうした日常生活のさまざまなシーンに対する適切な対応を、発達支援の現場ではソーシャルスキルトレーニングを通して学ぶことができます。ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは、人とのコミュニケーションやマナーといった社会生活を送る上で必要なあいさつや表現、立ち居振る舞いなどを学ぶトレーニングのことです。
ゲームやロールプレイング、イラストカードをはじめ、集団生活でその都度スタッフによるサポートを行うなど、複数の視点から社会性を身につける訓練を実施します。
児童発達支援や放課後等デイサービスなど発達支援の施設ではソーシャルスキルトレーニングを取り入れているところが多くあるのでチェックしてみましょう。
まとめ:発達障がいのこどもは怒られても笑顔なのはなぜ?叱られても笑ってしまう理由と対処法
今回は、怒られている発達障がいのこどもが笑顔で笑っている理由や大人の接し方について紹介してきました。
この記事で解説して来たように、怒られていても笑顔のままの発達障がいのこどもに対して、次のポイントを知っておくことが大切です。
- 発達障がいの特性で怒られていることに気づかないケースがある
- 怒られているときにふさわしい表情ができないことがある(思っていることと感情表現のズレ)
- 適切な態度を身につけるにはソーシャルスキルトレーニングが大切
怒られているのに笑ってしまう状態をそのままにしておくと、対人関係でトラブルになる可能性が高いため、社会性を身につけるソーシャルスキルトレーニングを受ける機会を作ることをおすすめします。
例えば、吹田にある放課後等デイサービス(放デイ)「こどもプラス大阪」では、TPOにふさわしい感情表現やマナーを訓練するソーシャルスキルトレーニングに力を入れています。
「大人に叱られていても笑顔のまま」で心配と感じている方は、ぜひ一度こどもプラス大阪までご相談ください。
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