発達障がいのあるこどもへの配慮で大切なポイントとは?社会に必要な「合理的配慮」の考え方(2)
2016年4月に施行された「障害者差別解消法」によって、障がいのある方が社会で暮らしやすくなるように『合理的配慮』を提供することが明記されました。
対人関係が苦手だったり、物事に強いこだわりがあったりする自閉症スペクトラム障がい(ASD)をはじめ、不注意・多動性・衝動性で知られるADHD(注意欠陥多動性障がい)、読む・書き・計算するといった基礎的な学習能力が困難な学習障がい(LD)など、発達障がいを持っているこどもには、学校での合理的配慮がとくに必要です。
そこで2回目の今回の記事では、学校における発達障がいのあるこどもへの合理的配慮について解説します。
合理的配慮とは
合理的配慮とは、障がいの有無に関わらず、みんながお互いに認め合って、共に生きる社会を目指すため、会社や学校などで社会の中にあるバリアに直面している人たちに対して、適切な支援や対応、ルールや環境の調整などをおこなうことをいいます。
障がいのある人たちから、社会の中にあるバリアのために生活に支障が出るという声があったとき、国や自治体、学校に対しては、負担が重すぎない程度で対応すること、事業者に対しては対応に努めることが求められます。
もし、負担が重すぎるため希望通りに対応ができない場合でも、その理由を丁寧に説明すること、別の方法がないか一緒に考えたり、提案をしたりしながら、お互いに理解をし合えることがポイントです。
例えば、車椅子で来店して、店内スペースの関係から奥への移動が難しい場合は、入り口付近の席が空くまで待ってもらう、といったケースが考えられます。
このように、合理的配慮の対応方法は、障がいを持っている人の特性をはじめ、その時や現場の状況に応じて柔軟に変えていく必要があるものです。
社会生活での合理的配慮の具体的ケース
社会生活において、具体的に合理的配慮のケースを見ていきましょう。
・障害のある人が講演会場で手話や字幕が見やすいように、手話者やモニターの位置に合わせて座席を変える
・書類を記入しなければならない場面で、とくに自筆でなければならない書類でない場合、お店の人や近くの人が本人の意思を確認しながら代筆する
・言葉によるコミュニケーションが難しい相手と、イラストや絵を使ったカードや、絵を描いて意思疎通を図る
・電車のホームやバス停など公共交通機関の乗降時、車椅子や歩行器を使っている方にスロープで移動を支援する
このように、一人ひとりの障がいの特性や困りごとに応じて、サポートをしたり、よりよい暮らしができるように手助けすることが、社会生活での合理的配慮です。
学校の合理的配慮と「不平等問題」
発達障がいのあるこどもたちが集団生活を通して心身の発達をしていく学校の現場では非常に重要な考え方です。障害者差別解消法によって、国公立学校は合理的配慮をしなければならないことが義務付けられました。
例えば、小学校3年生のAさんは、クラスの中にどうしても苦手な子がいて、不登校気味になっていました。発達障がいを抱えてていたAさんは、苦手な子から心ない言葉を浴びせられたり、いきなり叩かれたりしたことがきっかけで、学校に行くこと自体がストレスとなっていたのです。
そのため、Aさんの保護者は学校に対して、苦手な子とクラスを分けてほしいと申し入れをしました。しかし、はっきりした回答がないまま、時間が過ぎていき、諦めかけていたところ、次の新学期になっていきなりクラスが別になったことがわかりました。
発達障がいの特性を踏まえて、もう少し前向きに対応してもらえていたら、次のクラス替えまでの間もポジティブに過ごすことができたかもしれません。しかし、学校側からすると、発達障がいのあるAさんに対する配慮よりも、年度の途中でクラス分けをすることはできない、一人だけクラスを別にするのは不平等だ、といった意向が働いたのかもしれません。
自閉症スペクトラム障がい(ASD)やADHD(注意欠陥多動性障がい)といった言葉は広まっていても、実際の学校の現場ではまだまだ発達障がいに対する知識や対応方法自体が進んでいない現状があります。たとえば、努力だけで発達障がいの特性を克服させようとする姿勢は正しくありません。学習障がい(LD)で書くことが苦手なこどもが漢字の書き取りで点数が取れないからといって、ひたすら漢字ドリルの大量の宿題を出す、といったようなケースです。
学校生活での合理的配慮のポイント
発達障がいをはじめ、障がいが原因でこどもの学びに支障がある場合、本人の努力が足りなかったり、何度も繰り返しやらせれば身につくだろうと指導したりする方法は、こどもにストレスを与えて逆効果になる、と考えられるようになりました。
本人の問題ではなく、先生や学校側の指導方法や支援のしかたに問題がある、として、大人のアプローチをこどもの目線に合わせることが大切です。学校での特別支援教育をはじめ、広く発達支援で重要なコンセプトといえるでしょう。
とくに、発達障がいのこどもは、他の子とちがった視点やこだわりを持っています。そのため、一人ひとりの障がいの特性に応じたきめ細かな指導が必要です。そのために役立つものが、「個別指導計画」です。「IEP」と呼ばれているもので、その生徒に合った指導の目標と支援方法をまとめて書類にしています。個別指導計画の作成は、2016年6月の発達障害者支援法の改正でそれまで以上に推進することが求められるようになりました。現在、小中学校、通級や特別支援学級を含むすべてのこどもに個別指導計画の作成がスタートしています。
まとめ:発達障がいのあるこどもへの配慮で大切なポイントとは?社会に必要な「合理的配慮」の考え方(2)
今回の記事では、社会生活で必要な合理的配慮と、学校で始まっている合理的配慮の具体例を紹介しながら、発達障がいのあるこどものサポートを考えていきました。
次の3回目の最後の記事では、学校生活での合理的配慮についてさらに深く掘り下げて解説します。
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