発達障害のこどもの判断基準とは?症状や診断方法を知ろう②
発達障がいには主に3種類あって、自閉症スペクトラム障がい(ASD)、ADHD(注意欠如・多動性障がい)、学習障がい(LD)です。
日本では、医師が問診や検査などの結果から、アメリカの精神医学会による『DSM-5』やWHO(世界保健機関)による『ICD-10』の診断基準に従って診断します。
そこで2回目の今回の記事では、発達障がいのこどもの判断基準について、国際的な診断基準を使ってどのような診察や診断方法があるのか、ご紹介します。
2大国際的診断基準である『DSM-5』と『ICD-10』
国際的な発達障がいの診断基準は、2種類あります。それが『DSM-5』と『ICD-10』です。
1.『DSM-5』
『DSM-5』とは、『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版のこと。アメリカ精神医学会の診断基準で定期的に改訂がおこなわれています。
精神疾患の世界的な診断基準・診断分類、19年ぶりの大幅改訂!
米国精神医学会(APA)の精神疾患の診断分類、改訂第5版。DSM-IVが発表された1994年以来、19年ぶりの改訂となった今回は、自閉スペクトラム症の新設や双極性障害の独立など従来の診断カテゴリーから大幅な変更が施されることとなった。
2.『ICD-10』
『ICD-10』とは、WHO(国際保健機関)の診断基準です。『国際疾病分類』第10版を指します。
「疾病及び関連保健問題の国際統計分類:International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems(以下「ICD」と略)」とは、異なる国や地域から、異なる時点で集計された死亡や疾病のデータの体系的な記録、分析、解釈及び比較を行うため、世界保健機関憲章に基づき、世界保健機関(WHO)が作成した分類である。
『DSM-5』と『ICD-10』では、診断名や診断基準にちがいがあるため、医師や病院によってどちらの診断基準で診断するかは異なります。
たとえば、『DSM-5』には『ICD-10』の「アスペルガー症候群」という診断名はありません。そのため、ほぼ似た症状が特徴の『自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害』として診断されます。
このように、診断を受ける医師や医療機関によって、診断名が異なるケースがあるのがポイントです。また、こうした診断基準は定期的にアップデートされるため、診断を受ける時期によって診断名が変わる可能性も少なくありません。
発達障がいの診断方法
『DSM-5』や『ICD-10』の診断基準を使用しながら、医師は次のような診断方法をおこないます。
1.問診や行動観察をする
本人の症状や困りごとを、詳しくヒアリングしたり、こどもを遊ばせて親御さんと観察しながら判断していきます。
日常生活の困りごとや生育歴について、こどもに直接尋ねるのではなく、親御さんにヒアリングする場合がほとんとです。
生育歴のヒアリングでは、生まれてからこれまでの生活習慣やコミュニケーションスキルの問題や、言葉の発達、幼稚園や保育園での様子をはじめ、定期検診での内容を聞き取ります。
知的障がいはないか、発達障がいの場合ならどのような傾向が強いのか、判断の参考にします。
2.発達検査をする
こどもの心身の発達状況を調べる検査をおこないます。日本では、「新版K式発達検査」や「遠城寺式乳幼児分析的発達診断検査」といった方法でおこなわれています。使用する発達検査の種類によって、検査結果の表現方法や評価基準がちがうため、医師の判断基準に影響を与えるポイントでもあります。
3.個別検査をする
発達障がいのあるこどもは、他の障がいや病気が隠れている可能性があります。そのため、障がいや病気を切り分けるため、医師の判断で個別に検査をおこないます。
とくに知的障がいやてんかん、感覚特性(感覚過敏/感覚鈍麻)などは代表的な合併症です。
・知能検査
心理検査の一種で、「ウェクスラー式知能検査」や「田中ビネー知能検査」などがよく知られています。精神年齢や知能指数(IQ)、知能偏差値などの測定結果に基づいて、発達障がいのほかに知的障がいが隠れていないかを判断します。
・脳波検査
発達障がいの代表的な合併症であるてんかんを調べるための検査です。脳波検査のほかにもCTやMRIによる画像検査で脳の器質的疾患を調べる場合もあります。
・鑑別検査
発達障がいとよく似た症状の障がいが病気とを切り分ける目的で、血液検査、遺伝子検査など必要に応じて実施されます。精神疾患の疑いがある場合は、精神科系の医学検査を実施することも少なくありません。
知能検査や発達検査は、医療機関のほかに児童発達支援センターや発達支援の相談拠点で受けられる場合もあります。ただし、あくまで参考にするもので、発達障がいかどうかの正式な診断は医師が問診や行動観察、各種検査の結果にもとに総合的に判断します。
発達障がいかもしれないと思ったときの相談先
お子さんが発達障がいの疑いがあるかもしれないと思ったときは、保健センターや子育て支援センター、児童発達支援事業所や放課後等デイサービスなど、児童を対象とした障がい福祉の窓口に相談しましょう。
直接窓口を訪ねたり、電話相談をしたりすれば、よりお子さんの状態に合わせた相談先を紹介してもらうことができます。また、「もっと専門的な相談がしたい」「診断ができる医師に診てもらいたい」という場合は、小児科や児童精神科、小児神経科、心療内科や発達外来などを受診しましょう。
総合病院や大学病院の専門科のほか、地域の心療クリニックでも診断ができる場合があります。もしどのような病院に行けばよいかわからないときは、かかりつけの小児科の先生に相談すれば、ふさわしい専門医を紹介してもらえます。
受診や診断で用意したいもの
発達障がいの診断では、生まれてからこれまでの日常生活の様子が大きな参考材料として使われます。生育歴がわかる資料をできるだけ集めておきましょう。
育児日記をはじめ子育てで気になっていること、苦労していることを具体的にメモにしてまとめておくのもおすすめです。
とくに次のような資料は医師が問診や行動観察をするときの、大切な参考になります。
・母子手帳
・通信簿
・幼稚園や保育園、児童発達支援事業所や放課後等デイサービスなどの連絡ノート
・学校や発達支援施設でのプリントやノート、絵や工作など
医療機関を受診するときには、保険証を忘れないようにしましょう。問診票は事前にもらっておいたり、病院のホームページでダウンロードしたりして、診察までに記入しておくと診察時間が節約できます。
なお、病院によって前もって持ち物を指定されていることもあります。受診に当たっては予約が必要かどうかと合わせて持ち物についても電話で確認しておきましょう。
まとめ:発達障害のこどもの判断基準とは?症状や診断方法を知ろう②
発達障がいは、アメリカの精神医学会による『DSM-5』やWHO(世界保健機関)による『ICD-10』の診断基準に従って医師が総合的に診断します。診断方法は、問診や行動観察、各種検査の結果に基づいて、発達障がいかどうか、知的障がいや合併症が隠れていないかを確認しながら、医師や病院が使用する診断基準で正式な診断名が付けられるのです。
なお、実際に受診する場合は、母子手帳や通信簿など、生まれてからの様子がわかる資料をできるだけ持っていきましょう。
発達障がいの疑いがあるお子さんの相談は、放課後等デイサービス(放デイ)でも受け付けています。吹田のこどもプラス大阪では「発達障がいかもしれないけれど、いきなり病院に行くのはハードルが高い」といった親御さんの相談にものっていますので、お気軽にお問い合わせください。
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