発達障がいのこどもはネグレクトを受けやすい?児童虐待のこどもへの影響と対処法②
前回の記事ではネグレクトと呼ばれる育児放棄とは何か、児童虐待との関係や親子の問題についてご紹介しました。
親や養育者など、保護者の大人から適切な監護や世話を受けられずネグレクト状態で育つ発達障がいのこどもも少なくありません。適切な食事を与えない、学校に行かせない、不潔な服のまま何日も過ごさせる、など、こどもの健全な成長を妨げるネグレクトは、こどもの心を深く傷つけて、大人になってもトラウマから抜け出せなく苦しみ続ける人間を作り出してしまいます。
また、発達障がいのこどもはネグレクトを受けやすいといわれています。自閉症スペクトラム症やADHDの傾向のため親が虐待するきっかけを作り出し、繰り返し虐待を受けることで発達障がいの症状が深刻になる場合があるからです。
そこで後半の記事では、ネグレクトを受けているこどもの特徴や、なぜネグレクトが起きてしまうのか、もしネグレクトの可能性に気づいたときに周囲の大人はどうすればいいか、についてまとめてご紹介します。
ネグレクトを受けているこどもの特徴
親など保護者から適切な監護や世話を受けずに育てられるネグレクトのこどもたち。次のような特徴が見られると、ネグレクト状態の環境で育っている可能性が高いと考えられます。
1.ネグレクトを受けているこどもの身体的な特徴
十分な食事を与えない、清潔な着替えをさせず不潔な状態で過ごさせる、など、衣食住の生活環境面から次のような身体的特徴があります。
・同年齢の標準的な体格に比べて明らかに身長が低い、体重が軽い
・栄養失調で痩せ細っている
・脱水症のため倒れることがある
・皮膚のかさつきが強い
・目の下にクマがある
・むし歯が多い
・病気やケガをしても適切な医療を受けていない
・自宅の環境が不衛生
・不衛生・不潔な衣類を着ている
・季節外れの服装をしている
2.ネグレクトを受けているこどもの心理的・精神的(発達面や行動面)の特徴
家庭での教育が極端に乏しいため、発達面で遅れが出やすい場合があります。好奇心や学習意欲が引い、愛情が受けられないため人間関係を適切に築く、維持することが難しい、問題行動が多い、など社会生活に暗い影を及ぼします。
・発達(とくにことば)の遅れがある
・授業中じっとしていられない
・急に教室や学校を飛び出してしまう
・先生や生徒に攻撃的で喧嘩が絶えない
・言葉より先に手が出てしまう
・学習が身につけない
・自信が極端に低い
・協調性がなく友人関係を築けない
・平日の日中に学校に行かずに繁華街や公園などで過ごしている
・深夜・早朝まで外出している
・いつも空腹状態のためお店の食べ物を盗む
・友だちに小銭を借りようとする
・周囲のことに無関心
もちろん、こうした特徴があるからといって、すべてネグレクトのこどもだというわけではありません。ただ、いくつかの特徴を感じるようであれば、育児放棄かもしれないという意識を持っておくことは大切といえます。
ネグレクトはなぜ起きる?
ネグレクトを含むこどもの虐待は、保護者、こども、生活環境といった3つの要素が複雑に組み合わさって起きるものです。
そのため、ネグレクトが起きやすいリスクは親側をはじめこども側や生活環境にも由来します。
①親側のネグレクトを引き起こす要因
親としてこどもに愛情が感じられない、興味がない、というケースが大きなウエイトを占める要因です。
・こどもを受け入れられないまま子育てをしている
望まない妊娠だった、発達障がいをはじめ病気や障がいを持つこどもだった、再婚相手の連れ子だから、などいくつかのパターンがあります。
・育児の知識が不足している
親の愛情の問題のほかに、育児の知識が不足していて適切な保護や世話ができていない場合も少なくありません。適切なミルクや食事の量がわからない、こどもが病気やケガになっても病院に連れて行かなければならないという発想が起きない、などでネグレクトが引き起こされることもあります。
・親も児童虐待を受けて育った
児童虐待を受けて成長した親は、自分のこどもにもネグレクトをはじめ身体的虐待や心理的虐待をおこないやすいといわれています。
②こども側のネグレクトを引き起こす要因
生まれ持った性質や気質、病気や障がいなど、親側が子育てをするのにさまざまなハードルがあるこどもは、ネグレクトを受けやすくなる場合が少なくありません。
自立心が強いこどもに対して「こどものくせに反抗的でわがままだ」と感じたり、発達障がいのためさまざまな手続きや相談、通院などをわずらわしいと感じて育児放棄につながる場合もあります。
③生活環境でネグレクトを引き起こす要因
こどもが養育をされる生活環境が原因で児童虐待が起きる例は多く見られます。貧困のため親に経済的、心理的な余裕がなく、放任や無視につながるケースです。生活のために親がこどもを家に放置して働きづめだったり、こどもが病気やケガになっても医療費が出せないため適切な医療を受けさせなかったり、経済的な困窮による貧困家庭の問題は社会問題にもなります。
また、貧困家庭は育児の知識を身につけづらい、相談する相手がいない、わからないため、ネグレクトになるリスクが高くなるといわれています。
もしネグレクトかもしれないと思ったら「189」にダイヤルを
「近所のこどもで虐待を受けているかもしれない」
「経済的な事情で子育ての仕方がわからず、悩んでいる人がいる」
このように、こどもの問題に関する相談があるとき、「189」に電話をしましょう。「189」とは、厚生労働省が整備している電話相談窓口で、全国の児童相談所の共通ダイヤルになっています。電話をすれば、お住まいの近くの児童相談者につながって、専門家の対応が受けられます。
「189」は24時間365日体制です。通話料は相談者負担ですが、相談料などはかかりません。
相談に関する秘密が守られるので、安心して電話ができます。相談者の氏名など個人情報を知られたくない場合は、匿名での相談も可能です。
なお、子育てで悩んでいてこどもに手をあげてしまう、辛い態度がエスカレートしそう、といった保護者からの相談も受け付けています。
ネグレクトを発見したら通告する義務がある
児童虐待防止法によると、国民には児童虐待を受けていると思われる児童をみつけた場合、児童相談所など児童福祉の窓口に通告する義務を定めています。
いくら「189」が整備されていても、ネグレクトを受けているかもしれないと感じた周囲の人たちが、関係機関に連絡しない限り、児童虐待は止まりません。
かつて、家庭の親子問題は立ち入るべきではない、という考え方もありましたが、現在ではこどもの健全な成長や命を守ること、あわせて保護者のさまざまな事情にそって生活を支援するためにも、早期発見・早期対応が必要になっています。
親の立場で児童虐待を防ぐポイント
ネグレクトをはじめ児童虐待は、どんな親でもそれぞれの事情によって、いつ子育て中に育児放棄をしてしまうかわかりません。とくに発達障がいを抱えるこどもは、育児の困りごとが多いため虐待のリスクが高まることがわかっています。
発達障がいかもしれないとわかったら、発達外来や保健所の相談窓口を積極的に利用したり、行政の発達支援サービスをうまく使ったりして、育児の困りごとを一つずつ解決する、親としての負担を少しでも減らしていく、といったアプローチも大切です。
たとえば、発達支援事業所や放課後等デイサービス(放デイ)は、保護者とこどもとの良好な関係を築くアドバイスやセミナーを開いたり、通所中に育児から一時的に解放されて家事や用事、リフレッシュに時間を使ったりするチャンスを広げます。
まとめ:発達障がいのこどもはネグレクトを受けやすい?児童虐待のこどもへの影響と対処法②
ネグレクトを受けているこどもは、身体的な特徴や発達の遅れ、問題行動などが現れやすくなります。もし近所のこどもでネグレクトかもしれないと思ったら、児童相談所など関係機関に通告することは国民の義務です。ネグレクトの早期発見によって、こどもを保護するのはちろんのこと、親を手助けする機会が生まれます。
なお、発達障がいなど障がいや病気を持って生まれたこどもは、児童虐待を受けるリスクが高まるといわれています。親としてこどもを受け入れられない、こどもの困りごとから逃げたい、生活環境で適切な世話が難しいなど、さまざまな事情でネグレクトは起こります。
安心できる環境で子育てするためにも、発達障がいのあるこどもをお持ちの親御さんは、行政の発達支援サービスを使うことがおすすめです。吹田のこどもプラス大阪のような放課後等デイサービス(放デイ)では、親子関係をよりよくしていく視点からアドバイスや、こどものソーシャルスキルトレーニングを通して生活力を身につける指導をするなど、さまざまなアプローチで支援を続けています。
もし、発達障がいをお持ちのお子さんの子育てで悩んでいたら、お気軽にこどもプラス大阪までご相談ください。
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