発達障がいのこどもはパニックを起こしやすい!?パニックの原因や対処法を考えよう②
前回の記事では、こどものパニックやかんしゃくの特徴や背景について簡単にご紹介しました。
パニックやかんしゃくをこどもが起こすと、しばらくの間、泣き叫んだり、ものに当たったりして、収まりません。
下手になだめようとする、かえってパニックがひどくなってしまうこともあります。
パニックやかんしゃくは、自分の不快感を表現する手段だったり、コミュニケーションの手段の一つとして起こります。
そこで、今回の記事では、もう少し詳しくこどもがパニックを引き起こす理由を考えてみましょう。
そして、発達障がいとパニックの関わりや、パニックの予防・対処法をご紹介します。
こどもがパニックを起こしてしまう2つの理由
パニックやかんしゃくを起こすこどもの心の中に分け入ってみましょう。
読者がこどものころ、パニックやかんしゃくを起こしてしまったときを想像しながら、考えてみてください。
1.生理的な不快を伝えている場合
大きくなると、空腹になれば両親などの保護者に「お腹が空いた!」と言ったり、なかなか夜寝付けないときは「眠たいのに眠れないよ」と伝えたりできます。
このように、言葉や表情、身振り手振りといったコミュニケーション手段で生理的な不快を表現できるわけです。
しかし、乳児期の場合、空腹感をはじめオムツが濡れた、眠れない、服がこすれてかゆい、などの生理的な不快感を泣いて保護者に伝えます。
赤ちゃんや小さなこどもが泣いたとき、ミルクをあげる、オムツを取り替える、抱っこしてさすってあげる、など生理的な不快感を取り除くため、保護者はさまざまな方法でケアをし続けます。
生理的な不快を泣いて表現する
↓
保護者はお世話をする
↓
赤ちゃんと保護者との間のコミュニケーションが深まる
↓
赤ちゃんは生理的な不快をうまく伝えられるようになる
このように、赤ちゃんと保護者のコミュニケーション能力を支えるのが、赤ちゃんのパニックやかんしゃくだといえるでしょう。
赤ちゃんや小さなこどものパニックに対して、保護者はまっすぐに向き合って全面的にお世話をすることが大切です。
2.コミュニケーションのため自分の気持ちを知らせる場合
乳児期を過ぎて、1歳半頃から、こどもは自分の欲求と保護者のお世話やしてあげたいことの間に、食い違いがあると学びます。
保護者はこうしてほしい。
けれど、こどもは保護者の意図とは異なることをやりたい。
そんなとき、こどもはパニックやかんしゃくを起こして、保護者と自分とのやりたいことのぶつかりを解消しようとするのです。
こどもがパニックを起こすのは、こども本人が「保護者と自分は別々の人間であること」を少しずつ理解している証拠です。
2〜3歳のイヤイヤ期に入ると、言葉によるコミュニケーション能力もついてくるため、パニックやかんしゃくを起こしたときは、「やりたくない!」「これがやりたい!」などと言葉も交えて泣き叫ぶようになります。
このように、イヤイヤ期のこどもによく現れるパニックは、保護者をはじめ家族や身近な人たちとの関係が築けていること、不快なこと、やりたいこと、やりたくないことを言葉を含めて表現できるようになっていることを意味しています。
親御さんにとっては大変な時期ではありますが、こどもが成長している歓迎すべき状態といえるでしょう。
ちなみに、何かを周囲に伝えたいコミュニケーションの手段としてパニックやかんしゃくを起こす理由は、注目してかまってほしい気持ちや、何かが欲しい、これをやりたいという要求、そして、やりたくないこと、嫌なことに対する拒否の3つのポイントに分かれます。
生理的な不快を伝えるパニックやかんしゃくと違って、コミュニケーションのためのパニックは、保護者の対応次第でひどくなったり、治りづらくなったりする可能性があります。
もしこどもがおもちゃで遊んでいたいのに、母親が食事の時間だからとおもちゃを取り上げてパニックを起こしたしましょう。
その場合、パニックをやめさせるために、再びおもちゃを与えてしまったケースでは、こどもは不快なことがあってもパニックを起こしさえすれば要求が叶えられる、というように学習していたり、習慣になっていたりすることが少なくないかもしれません。
発達障がいとパニックの関係は?
発達障がいを抱えるこどもはパニックを起こしやすいといわれることがありますが、本当なのでしょうか。
パニックやかんしゃくそのものは発達障がいの有る無しに関わらず、こどもであればどんな子でも起こします。
ただし、発達障がいのあるこどもの特性が原因で、パニックやかんしゃくを起こしているかもしれません。その特徴を知っておきましょう。
自閉症スペクトラム症やADHDの特性
発達障がいのなかでも、自閉症スペクトラム症(ASD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)などを持つこどもは、パニックを起こす原因に発達障がいの特性が関わっている場合があります。
つまり、発達障がいのこどもならではの特徴が、パニックを引き起こしやすい心の状態を作り出しているのです。
・感情をうまくコントロールできない
発達障がいをもつこどもの場合、不快な状況をまともに受けとめてしまったり、目の前の嫌な状況を変える手立てがわからずに大きなストレスを抱えたり、する傾向が強く現れます。
また、不快な状況に陥ってしまうと、気分転換をする、やり方を変えてみるといった別の視点を持つのが苦手です。
ストレスや興奮状態を自分自身でコントロールするのが難しいため、日常生活のさまざまな不快な出来事をダイレクトに体験してしまいます。
そして、ストレスがたまってしまって限界を超えると、パニックやかんしゃくとして爆発してしまうのです。
・こだわりの強さや自分と他者との距離感がつかめない
相手の気持ちを察するのが難しい、自分の気持ちと相手の意図を調整するのが苦手、といった発達障がいのこどもたちは少なくありません。
なかでも、自閉症スペクトラム症のこどもたちは、相手の気持ちや意図をキャッチするのが苦手な場合が多いといわれています。
また、ひとつのことに対するこだわりが強い、集団生活のような他者のペースに合わせて行動するのが苦手な特性もあるのがポイントです。
自分はこれをやりたい。
しかし、周囲の気持ちを理解しないまま、実際にやろうとすると、相手から「やめて」といわれてしまいます。
その繰り返しによって自分の要求が満たされない状態が積み重なって、自分が思うようにやりたくても他人は邪魔してくるというネガティブなイメージが定着してしまうのです。
一方で、注意欠陥多動性障害(ADHD)のこどもたちの特性として、衝動性があります。
やりたいと思ったら、今すぐやらなければ気が済みません。
自閉症スペクトラム症のケースと違って、相手の気持ちや意図を理解できるこどもでも、衝動的に行動を起こしたいという欲求を抑えきれないため、周囲の気持ちと衝突しやすくなります。
発達障がいのこどもの特性は、こども一人ひとりによっても個性はありますが、ストレスや不快な状況を溜め込んでいて、我慢できなくなったときにパニックやかんしゃくを起こしてしまいます。
・言葉の発達に遅れがある
発達障がいをもつこどものなかには、発話ができない、発話が苦手である、ボディーランゲージが不得意だ、など言葉や表現力の発達が遅い場合が少なくありません。
そのため、自分の気持ちや意図をうまく相手に伝えるコミュニケーション能力が不足していて、伝えられないもどかしさを感じています。
・敏感で神経質
感覚過敏な傾向は、発達障がいのこどもたちに多く見られます。
視覚や聴覚、触覚など、日常の些細な刺激も敏感に感じてしまって、常にストレスフルな生活を送っています。
神経質のため不快をより大きく感じてしまって、パニックになる場合もあります。
・決まった通りにやらないと気が済まない
自閉症スペクトラム症の特性として、「同一性保持」と呼ばれるものがあります。
同じ物に固執したり、同じ場所や同じルートを通らなければ落ち着かない、不安になるなど、こだわりの強さの一つです。
いつもと違うパターンでやらなければならなかったり、突発的な出来事が起こってしまったりすると、うまく対応できずに感情が乱れてパニックに発展しやすくなることもあります。
パニックを予防する方法
それでは、こどものパニックを予防するにはどうすればいいのでしょうか。
1.言葉がけを工夫する
日常生活のこどもがパニックを起こしやすいのは、一つの行動と次の行動との間の切り替わりのタイミングです。
そのため、次の行動を促すときは、こどもの気持ちが落ち着いて、切り替わるため余裕を持った声がけをしましょう。
ずっとこどもが遊んでいて、いきなり一度の言葉がけで遊びをやめて食事へと切り替えさせるのは大変です。
前もって、どのくらい遊んだら食事の時間がやって来るのか、数回に分けて伝える方法も有効になります。
また、イラストや写真、文字などを活用して、今の行動の後に次の行動があることを視覚的に伝える工夫もおすすめです。
2.コミュニケーションツールを利用する
パニックやかんしゃくを起こしているこどもは、自分の感情や意図を周囲にうまく伝えられないもどかしさを強く感じています。
そこで、絵カードやタブレットを通して、言葉を使わなくても「怒っている」「イライラしている」「今すぐやりたい」などを指で指し示して伝えられるようにします。
もし、こどもがパニックやかんしゃくを起こしたとき、不快な感じを持っていそうなときは、そばにあるコミュニケーションツールを使って、気持ちや感情を教えてもらいましょう。
また、もしパニックのときにこども自身がどのように表現したらいいか困っているときは、「困っている」「わからない」という言葉で周囲が理解できることを根気よく教えることも大切です。
3.こどもと一緒にパニック時のルールを決める
大人から一方的に次の行動を押しつけても、こどもは不快に感じて反発するだけです。
言葉によるやりとりができるようになったこどもには、パニックになったとき、どのようなルールで次の行動へと切り替えるのか、一緒に決めておくのがおすすめです。
ルールを話し合うときは、パニックやかんしゃくを起こしていない冷静な時にしましょう。
パニック時の対処方法
もしこどもがパニックを起こしてしまった場合、落ち着かせるにはどのようなポイントに気をつけて対処すればいいのでしょうか。
ここでは3つのポイントをご紹介します。
1.ケガのないように配慮する
パニックやかんしゃくで物を投げたり、暴れたりするこどもの場合は、ケガをしないように周囲の環境が安全かどうか、確かめましょう。
柱や壁、床に頭や体をぶつけることの多いこどもには、クッションやタオルを使って衝撃をやわらげる工夫が必要です。
2.落ち着くまで様子を見守る
パニック状態をやめさせたいからといって、すぐにやさしい態度で接したり、注意してやめさせようとしたりすると、かえって悪化する場合があります。
「パニックを起こすとすぐにかまってもらえる」という学習をしてしまうため、いつまで経ってもパニックを繰り返すことになりかねません。
同じように、おもちゃやお菓子を与えて、その場を収めてしまう解決法もパニックやかんしゃくを再発するので、避けましょう。
できるだけ、パニックになっても、そのまま様子を見て待ち続けるのがおすすめです。
外出先の場合は時間を持つ余裕はないかもしれませんが、感情的に叱らない、一度人混みを離れて落ち着いた場所に移動させる、といった工夫も効果的です。
3.落ち着いたら褒める
パニックやかんしゃくが収まって、こどもが十分に落ち着いたら、パニックをやめたこと、落ち着いたことをその場でしっかり褒めてください。
できれば、「気持ちが落ち着いてよかったね」「次の行動にスムーズに移れたね」など言葉がけも工夫して褒めてあげてください。
パニックを起こしてもやめれば褒めてもらえる安心感から、次第にパニックを起こさないようになっていきます。
まとめ:発達障がいのこどもはパニックを起こしやすい!?パニックの原因や対処法を考えよう②
2回にわたって、パニックの原因や発達障がいとの関係、予防や対処法について見て来ました。
実際に、こどものパニックで悩んでうまく対処ができないときは、専門の窓口に相談してみましょう。
子育て支援センターや発達外来などの医療機関、発達障がいのこどもたちをサポートしている児童発達支援事業所や放課後等デイサービスがおすすめです。
吹田のこどもプラス大阪も、放課後等デイサービスの一つで、こどものパニックやかんしゃくの相談にのっています。
放課後等デイサービス(放デイ)への通所を重ねて、うまく気持ちを伝えられるようになったり、感情をコントロールするスキルを学んだりして、パニックやかんしゃくが落ち着いたこどもたちも少なくありません。
ソーシャルスキルトレーニングに力を入れている放デイのこどもプラス大阪まで気軽に相談してみてください。
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