発達障がいのこどもがクリニックで診断を受けるまでの流れ|診断基準や受診時の注意点
「ひとり遊びが多くて、お友だちとうまく付き合えていない」
「初めての場所に行くと、信じられないくらい緊張している」
「落ち着きがなくずっとおしゃべりしている」
こどもさんの様子で気になることがあったり、乳幼児健診や入学前健診などで発達障がいの可能性を指摘されたりしたことはありませんか。
発達障がいは早期発見・早期療育によって、こどもの生きづらさを緩和し、自立して生活できる力を身につけるサポートが大切です。
ただ、発達障がいの病院やクリニックで診てもらうのは抵抗があるといった声も少なくありません。
そこでこの記事では、もしこどもの発達障がいを疑ったとき、どのような行動を取ればいいのかわかりやすく紹介します。とくに発達障がいに関するクリニックの受診で行われる診察や検査、治療法などについて詳しく解説していきますので、ぜひご一読ください。
発達障がいかもしれないこどもの言動の特徴
発達障がいのあるこどもは、生まれつき脳機能の働きに偏りがあるためにさまざまな特性が現れます。
次のような特徴で困っている、将来が心配といったことはありませんか。
乳幼児(未就学児)〜小学校低学年
- いつも動き回ってじっとしていない
- 落ち着きがなく飽きやすい
- 大人の視線や表情に対する反応が薄い
- 名前を呼んでも反応しない
- 自分の思い通りにならないと癇癪を起こしたりパニック状態になる
- 親でも抱っこされるのを嫌がる
- 自分だけのルールややり方にこだわる
- 偏食が強く栄養バランスが心配
- 同じ持ち物や遊びばかり好む
- いつも慣れた道を通りたがる
- 他のこどもと遊ぶのが下手
- 他のこどもと遊ぼうという気持ちがない
小学校中学年から中学生
- 授業中なのにじっと座って勉強できない
- 椅子に座ったまま手や足をいつも動かしている
- 授業中に教室から急に出て行ってしまう
- 忘れ物や宿題をよく忘れる
- 感情のコントロールが下手
- ちょっとしたことで癇癪を起こす
- 何度注意しても生活態度やクセが直らない
- 片付けや整理整頓が下手
- 友だちができない、友だちとトラブルを起こしやすい
- して欲しいこと、困ったことがあっても誰かに助けを求められない
- 大人びた話し方をしたり、同じ話ばかり繰り返す
- グループで話している話題を急に変えようとする
- 場の空気や集団のルールがわからない
こうした行動や特性が重なると、こどもの日常生活に暗い影を落としてしまいます。友だちと上手くコミュニケーションが取れない、社会のルールが身につかない、周囲とトラブルを起こしやすいなど、自立した社会生活を送るためには問題となる特徴ばかりです。
ただし、ここで挙げた特徴に当てはまるからといって、こどもの発達の個性によることも少なくないため、一概に発達障がいの可能性と結びつけることはできません。対人関係やコミュニケーション、集団生活においてこどもが困りごとを抱えて生きづらさを感じているかをポイントにしましょう。
発達障がいの3つの種類
発達障がいは主に以下の3種類に分かれます。
- 自閉症スペクトラム障がい(ASD)
- 注意欠如・多動性障がい(ADHD)
- 学習障がい(LD)
とくに、2番目の「注意欠如・多動性障がい(ADHD)」は、不注意・多動性・衝動性の3つの要素で説明されることが多いタイプです。
では、以下で簡単にそれぞれの特徴を確認しておきましょう。
自閉症スペクトラム障がい(ASD)
対人関係や社会性、コミュニケーションスキルに困難があったり、同じ物事にこだわって繰り返したりする特徴を持つ発達障がいです。
かつては自閉症やアスペルガー症候群などと呼ばれていたものがまとめてASDと呼ばれるようになりました。
自閉症スペクトラム障がいのこどもは次のような特徴を持っています。
- ひとり遊びが多く友人関係を築くのが苦手
- 相手との距離感がわからず誰にでも親近感を持って話しかけてしまう
- 素直に自分の思ったとおり言って相手を怒らせてしまう
- 自分が好きな話題しか話さない
- 質問に対して的外れの回答をする
- 新しい場所で緊張するため慣れた場所を好む
- いつもと同じルートで行き来しないと不安
- 自分だけのルールに強いこだわりがある
注意欠如・多動性障がい(ADHD)
ADHDは、次の3つの特徴が症状で現れるタイプです。
- 不注意:集中力がない
- 多動性:じっとしていられない
- 衝動性:思いつきで突発的に行動する
ただ、それぞれの症状の現れ方は個人差があり、例えば不注意が強いこどももいれば、多動性と衝動性が強く不注意はあまり出ないこどももいるなど、さまざまなパターンがあります。
学習障がい(LD)
読み書き、会話や計算など、基礎的な学習能力で困難さが見られるタイプです。ただし、基本的に知的発達に遅れはありません。
どの学習能力に困難さが生じるかによって、次の3つの種類に大きく分けられてます。
- ディスクレシア(読字障がい):文字を覚えられない、文字を読めない
- ディスグラフィア(書字障がい):文字がうまく書けない、鏡文字になってしまう
- ディスカリキュリア(算数障がい):簡単な計算ができない
なお、現在は「限局性学習症/限局性学習障害」という診断名に変更されています。
発達障がいの周辺症状とグレーゾーン
発達障がいは一種類のみ見られるこどももいれば、自閉症スペクトラム障がいとADHDの2種類を併せ持つケースもあるなど、いくつかのケースに分かれます。
また、感覚過敏や感覚鈍麻など、光や音、触覚などが極端に敏感あるいは鈍感な傾向がある場合も少なくありません。このほか、言葉の遅れ、基礎的な運動能力が乏しい発達性協調運動障がいなどが見られることもあるなど、発達障がいだけに囚われることなく広い視点でこどもを見つめることが大切です。
発達障がいは、医師による診察・検査を経て診断が下って初めて障がい名が確定します。ただし、診断基準を満たさないものの日常生活や社会生活で困りごとが多いこどもの場合、発達障がいのグレーゾーンに当てはまる可能性があります。
グレーゾーンだからといって、診断を受けているこどもより明らかに日常生活で困難さが少ない、というわけではありません。むしろ、適切な療育や支援につながらない場合、サポートの谷間にはまって自立した生活が難しくなるこkどもも多いからです。
発達障がいで大切なことは、診断の有無ではなくこども本人が困難さに直面しているか、どうすればもっと生きやすい生活が送れるかといった視点です。早期発見で早期療育につなげることで、こどもは障がいの特性を早いうちからコントロールするスキルを身につけ、自分の個性を発揮して成長するきっかけとなります。
発達障がいかもしれないときはまずかかりつけの小児科へ
発達障がいの疑いがあるとき、まずかかりつけの小児科医に相談しましょう。日頃の様子を伝えたり、保護者から聞き取りをしながら、医師は発達障がいを専門とする発達外来や小児科医、神経内科などを紹介します。また、地域の発達障がい者支援センターなど公的機関を奨められることもあります。
また、発達障がいを取り扱っている病院やクリニックのリストを自治体でまとめている場合があります。障がい福祉や子ども福祉の担当窓口で確認してみましょう。
町の小児科クリニックや自治体の福祉窓口のほか、次のような場所でも相談を受け付けています。
- 保健所・保健センター
- 子育て支援センター
- 発達障害者支援センター
- 児童相談所
保健所・保健センター
乳幼児健診や小学校の入学前健診などで発達障がいの可能性を指摘されることがあります。また、発達障がいの相談を随時受け付けています。
子育て支援センター
乳幼児のこどもとその親の交流スペースです。曜日や時間によって育児相談や電話相談を提供しています。
発達障害者支援センター
発達障がいに関するさまざまな相談を受け付けている公共施設です。発達障がいのある本人やその家族だけでなく、医療機関や教育機関へのアドバイスも行っています。
相談を通して病院やクリニックなど適切な窓口の案内も行っています。
児童相談所
こどものさまざまな問題に対する助言や指導、相談業務を行っている公的機関です。育児問題から発達障がいや身体障害のあるこどもの相談まで、幅広く対応しています。
ここで挙げた自治体の窓口などで相談すれば、地域の病院やクリニックの中から発達障がいの診断ができるところを紹介してもらえます。
発達障がいの診断基準
発達障がいは医師のみ診断できます。こどもの発達障がいについては発達障がいを専門とする精神科医や小児科医、神経小児科医などが診断基準に基づいて判断します。
発達障がいの診断は、アメリカ精神医学会の「DSM-5」と呼ばれる精神史果敢の診断基準・診断分類をベースに行われます。最新版の「DSM-5」は2014年に日本でも使われるようになりました。
以下、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障がい(LD)の主な診断基準を「DSM-5」で確認しておきましょう。
自閉スペクトラム症(ASD)
- 複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的欠陥があること
- 行動、興味、または活動の限定された反復的な様式が2つ以上あること(情動的、反復的な身体の運動や会話、執やこだわり、極めて限定され執着する興味、感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ など)
- 発達早期から1,2の症状が存在していること
- 発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されていること
- これらの障害が、知的能力障害(知的障害)や全般性発達遅延ではうまく説明されないこと
注意欠如・多動症(ADHD)
- 「不注意(活動に集中できない・気が散りやすい・物をなくしやすい・順序だてて活動に取り組めないなど)」と「多動-衝動性(じっとしていられない・静かに遊べない・待つことが苦手で他人のじゃまをしてしまうなど)」が同程度の年齢の発達水準に比べてより頻繁に強く認められること
- 症状のいくつかが12歳以前より認められること
- 2つ以上の状況において(家庭、学校、職場、その他の活動中など)障害となっていること
- 発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されていること
- その症状が、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中に起こるものではなく、他の精神疾患ではうまく説明されないこと
学習障がい(LD)
発達性ディスレクシアの診断は、標準化された読字・書字検査によって実施されます。
以下は、発達性ディクレシア(書字障がい)の診断の流れを解説したものです。
- 最初に知的機能評価を行います。このためにはWechsler式知能検査などの標準化された知能検査が重要です。知能指数(IQ)が知的障害のレベルにはないことを確認します。
- 次に、ひらがな音読検査を行い、その流暢性や正確性を確認します。2010年に発行された「特異的発達障害診断・治療のための実践ガイドライン」に、4つの音読検査が示されています。また、STRAW-R、KABC-II習得度検査、CARD等により、漢字やひらがなの読字書字到達度を測ることができます。最近は、英単語の読み書き理解についての検査法も刊行されています。
- 読みを支える側面について、音韻認識機能の検査(しりとり、単語逆唱、非語の復唱)、視覚認知機能の検査(Rey複雑図形模写、視知覚発達検査)、言葉の記銘力検査(auditory verbal learning test; AVLT)などを行う場合もあります。
学習障害(限局性学習症) _ e-ヘルスネット(厚生労働省)
このように、病院やクリニックの医師はさまざまなアプローチを使って慎重に発達障がいの診断基準に当てはまるかどうかを判断してます。
発達外来のクリニックを受診したときの流れ
発達障がいの専門外来を発達外来と呼ぶことがあります。発達外来ではどのような流れで診察が行われるのでしょうか。以下、一般的なクリニックでの初診と再診の流れを紹介します。
- 発達外来に初診予約をする
- 初診当日①受付
- 初診当日②心理士による予診
- 初診当日③医師の診察・面接
- 初診当日④発達検査の予約
- 初診当日⑤会計
- 再診当日①発達検査を受ける
- 再診当日②医師との面談(初診・再診の検査結果の説明)
発達外来に初診予約をする
初診は予約制のクリニックが大半です。予約が混んでいるクリニックではかなり先まで予約待ちのことがあります。
初診当日①受付
当日は予約時間に遅れないようにしましょう。主な持ち物は次の通りです。
- 健康保険証
- 親子手帳
- 受給者証
- 発達検査結果がわかるもの
- 他院からの紹介状
大幅に予約に遅れるとキャンセル扱いされる場合があります。次の予約が取れるまで長期間かかることも少なくないので注意してください。
初診当日②心理士による予診
心理士がこどもと遊びながら、保護者にもヒアリングして今の状態を把握していきます。
初診当日③医師の診察・面接
持参した書類や心理士の予診をもとに、初診を受けます。
初診当日④発達検査の予約
発達検査は初診に行うクリニックもあります。
初診当日⑤会計
会計をして初診は終了です。
再診当日①発達検査を受ける
発達検査の予約日に受診します。通常1〜2時間程度必要です。
再診当日②医師との面談
初診・再診の検査結果の説明があります。発達障がいの診断結果や、その後の治療やサポートに関する説明を受けます。療育センターでのサポートが必要なケース、クリニックで薬や経過観察などの定期診察を奨められるケース、グレーゾーンや発達障がいの診断基準に当てはまらない場合は家庭や保育所・幼稚園、学校での環境調節で困りごとを改善していきます。
クリニック受診時の注意点
発達障がいの診断において、医師はこれまでの成長記録や発達の様子を把握するため、親子手帳や育児日記をはじめ、保育所・幼稚園や学校での連絡帳などを重視します。場合によっては保育士や学校の先生に改めて日々の様子を記入してもらうこともあります。
また、事前に保護者が記入する詳細な問診票を用意しているクリニックも少なくありません。
こどもの発達状況を知るために大切なこうしたレポートや問診票は用意するまでに時間がかかるため、初診の申し込みをした段階で詳細をクリニックに確認しておきましょう。
また、発達障がいの診断を受けた場合、クリニックに併設されている療育センターでリハビリを受けられるところもあります。リハビリは作業療法士や言語聴覚士が担当しますが、初診や発達検査の結果に基づいてリハビリの方針を決定するため、リハビリ初回まで数か月単位の時間を必要とする場合も少なくありません。
療育は、未就学児から小学校低学年からスタートする割合が多くなっています。
まとめ:発達障がいのこどもがクリニックで診断を受けるまでの流れ|診断基準や受診時の注意点
発達障がいの可能性が疑われたら、今後の支援の方向性を決めるためにも早めに発達外来など専門医に相談するのがおすすめです。
しかし、発達障がいのこどもの療育は、クリニックで発達障がいの診断を受けなくても受けられます。グレーゾーンであっても発達障がいの特性によって日常生活で困りごとが多いこどもには、児童発達支援や放課後等デイサービスなどの発達支援サービスで生活スキルを身につけることが大切です。
吹田の放課後等デイサービス「こどもプラス大阪」でも、クリニックで発達障がいの受けたこどもはもちろん、診断の下りていないこどもでも通所でソーシャルスキルトレーニングや運動遊びなどの訓練を受けて、日常生活の困難さを改善する取り組みをしています。もし発達障がいかもしれないと思ったら、こどもプラス大阪までご相談ください。今後の適切な療育について発達支援事業所の立場から丁寧に対応いたします。
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