発達障がいのこどもが通うデイサービスとは?放課後等デイサービスや児童発達支援の利用ポイント
発達障がいのあるこどもを支援する通所施設のひとつに「放課後等デイサービス」があります。
以前は「児童デイサービス」と呼ばれ、乳幼児支援と、就学児の放課後支援を兼ね備えた障害福祉サービスでした。2012年の改正児童福祉法により、障がいのある未就学児は「児童発達支援」に、小学生から高校生までの支援は「放課後等デイサービス」に名称や施設が分かれて、運用されています。
そのため、10年ほど経った今でも、児童発達支援や放課後等デイサービスのことを児童デイサービスと呼ぶ場合も少なくありません。
そこでこの記事では、発達障がいのあるこどもが多く通っているデイサービスについて、児童発達支援と放課後等デイサービスに分けて詳しく解説します。各事業所の特徴やサービス内容、利用方法などをまとめて見ていきましょう。
発達障がいのあるこどものための5種類の通所型施設
児童デイサービスの移り変わり
児童発達支援や放課後等デイサービスは、2012年の児童福祉法改正によって誕生した発達支援サービスです。以前は「児童デイサービス」と呼ばれていましたが、利用するこどもの年齢や目的などによって整理されました。
障がいのあるこどもが通所する施設をまとめて児童デイサービスと呼ぶことがあるのは、もともとあった障がい児支援サービスが分化・再編されてリスタートしたためです。
なお、障がい児支援施設には、入所型と通所型の2種類がありますが、この記事では通所型を取り扱います。
発達障がいをはじめ、さまざまな障がいを抱えるこどもたちの支援事業には、次の5種類の通所サービスがあります。
- 児童発達支援
- 放課後等デイサービス
- 医療型児童発達支援
- 保育所等訪問支援
- 多機能型事業所
どちらの施設も発達障がいのあるこどもが通っているので、よく違いがわからないといった方も多いのではないでしょうか。
このうち2番目の「放課後等デイサービス」は、小学生から高校生の就学児が通って療育を受ける福祉サービスのひとつです。
児童発達支援とは
児童発達支援は、かつての児童デイサービスが分かれて誕生した療育施設です。未就学児を対象としており、乳幼児の発達段階に合わせた支援内容や療育目標が特徴となっています。
そのため、児童発達支援では、0歳から6歳までの成長段階に身につけておきたい日常生活動作をはじめ、感情コントロールやコミュニケーションスキルなどをこども一人ひとりの障害の状況や特性などに応じて支援します。
児童発達支援には、次の4つのタイプがあります。
- 児童発達支援
- 医療型児童発達支援
- 居宅訪問型児童発達支援事業
- 児童発達支援センター
児童発達支援
一般に「児童発達支援」と呼ぶとこのタイプを指します。障害のあるこどもやその家族の支援・助言を小規模単位の施設で行います。放課後等デイサービス(放デイ)や小学校の児童クラブ(学童保育)に近い事業です。
医療型児童発達支援
医療型児童発達支援では、上肢や下肢、体幹機能に障害を持つこどもが対象の通所施設です。日常生活動作の訓練をはじめ社会性やコミュニケーションスキルを身につける療育が行われるのは児童発達支援と共通しています。加えて、リハビリや医療的管理が受けられるのがポイントです。
理学療法士や作業療法士などリハビリテーションのスペシャリストが身体の動かし方や細かな作業のポイントなどの訓練を担当します。
居宅訪問型児童発達支援事業
発達支援が必要なものの、重度の障害のため外出が困難なこどもの自宅を訪問します。医療的ケアを受けているこども、病気で感染症リスクが高い18歳までのこどもの支援がポイントです。
支援内容は、放課後等デイサービスのように日常生活動作の訓練やコミュニケーションスキルの訓練のほか、児童発達支援など通所型の発達支援事業へうまく切り替えるためのサポートもします。
児童発達支援センター
市町村や地域単位に設置された児童発達支援の中核となる施設です。日常生活に必要な生活スキルの訓練を通して自立した生活ができるようにサポートします。保育所や幼稚園、小学校などに通っている障がいのあるこどもが集団生活をうまく送るための訪問支援も児童発達支援センターの大切な役割です。
児童発達支援センターによっては、親子で通所して診察や生活スキルの訓練などをメインとした療育や相談業務を提供している「医療型」の施設もあります。
放課後等デイサービスとは
放課後等デイサービスも児童デイサービスから分かれて誕生した通所支援事業のひとつです。発達障がいのあるこどもたちが通うサービスの中でも知名度が高く、一度は耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
利用対象は、障害のある小学生から高校生の就学児です。放課後や長期休暇に通所して、発達支援のため生活スキルの訓練や宿題のサポート、運動や遊びなどを療育に精通したスタッフが提供します。
保育所等訪問支援とは
学校などで集団生活を送る障がいのあるこどもたちのため、専門スタッフが保育所や幼稚園、小学校などを訪問して集団生活に馴染めるようにサポートする事業です。
具体的には、教室に入ってうまく社会性を身につけながら集団生活が出来るようにフォローする、保育士や先生に障がいのあるこどもにとって必要な支援方法をアドバイスする、といったサービスを提供します。
多機能型事業所とは
障がいのあるこどもに対して複数の訓練や支援事業を2つ以上提供する施設を指します。
生活介護、自立訓練(機能訓練)、自立訓練(生活訓練)、就労移行支援、就労継続 支援A型、就労継続支援B型の事業のうち2つ以上の事業を一体的に行う(2つの事 業所で行う)ことをいう。
多機能型事業所について – 大阪府
同じ事業所が複数の支援サービスを提供しているため、利用者が別のサービスを利用したいときに馴染みのある事業所の中から選びやすくなります。こどもも大きな環境の変化がないので、スムーズに移行ができます。
児童デイサービスで働くスタッフの職種・資格
以前児童デイサービスと呼ばれていた施設ではどのようなスタッフがいるのでしょうか。
児童発達支援や放課後等デイサービスでは、主に次の5つのスタッフが活躍しています。
- 児童指導員
- 保育士
- 児童発達支援管理責任者(児発管)
- 機能訓練担当職員
- 管理者
とくに1番目の「児童指導員」と2番目の「保育士」は2019年4月の児童福祉法の改正で配置が必要となった点がポイントです。
では、ひとつずつ見ていきましょう。
児童指導員
児童発達支援や放課後等デイサービスの事業所でこどもたちの支援の中心となるスタッフです。通所するこどもたちが過ごすスペースの環境整備をはじめ生活スキルの訓練や集団生活での指導をするなど、こどもの中に入って発達支援を行います。
事業所が組み立てた活動プログラムや、こども一人ひとりに作成されている支援計画に基づいて適切にこどもの療育をしたり、興味や関心、好奇心を引き出してこどもたちが持っている才能や能力を伸ばしたり、さまざまな角度からこどもの心身の成長をサポートします。
児童指導員には、スタッフ同士の連携やこどものご家族からの希望や相談内容をベースとした支援も大切です。
児童指導員になるには、社会福祉学や教育学、心理学、社会学の専攻学科で四年制大学を卒業するほか、児童指導員養成施設の卒業者、社会福祉士や精神福祉士、教員免許の保有者などであることが必要です。
保育士
児童指導員と協力してこどもと直接触れ合いながら、発達支援を行うスタッフです。とくに未就学児が通所する児童発達支援では、保育士の配置が必要のため有資格者が欠かせません。児童デイサービスの中でも児童発達支援事業は保育のアプローチが求められるため、保育所や認定こども園などと同じく保育士が多く活躍しています。
保育士資格は、高校卒業後、大学や専門学校などの保育士養成施設を卒業すると取得できます。一般の大学や専門学校などの卒業者や実務経験2年以上の人でも保育士試験を受験して合格すれば取得可能です。
児童発達支援管理責任者(児発管)
児童指導員や保育士などのスタッフと、こどもの家族や関係機関の間に入って、連携しながら療育を進めるリーダー的役割です。
主な仕事は、家族や関係機関との連絡調整をはじめ、個別支援計画の作成、スタッフの指導や助言など、事業所の療育を中心となって実行することです。児童指導員や保育士などと一緒に、こどもの日常生活や社会生活のスキルトレーニングといった生活全般のサポートも行います。
児童発達支援管理責任者は、障害福祉サービスが分化・再編された2012年の改正児童福祉法と改正障害者自立支援法に基づいて新設されました。現場で障がい児支援をさらにバックアップする狙いがあります。
資格の取得方法は、一定年数以上の実務経験です。ただし、実務経験の内容や国家資格の有無、対象となる事業所などが自治体によって異なるため、必要要件が複雑になっています。一般的には、障害者や障がい児のための相談支援や直接支援業務を3年以上必要です。
機能訓練担当職員
一般には「リハビリの先生」と呼ばれることが多い、リハビリテーションの専門家です。日常生活を送るために必要な身体機能の訓練を、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)といった国家資格の取得者が担当します。
児童デイサービスのうち、医療型児童発達支援センターには必ず理学療法士(PT)または作業療法士(OT)が配置されています。
以下、3種類の機能訓練担当職員の国家資格を簡単に紹介します。
理学療法士(PT)
ケガや病気、加齢、障害などのため、座る、経つ、歩くといった運動機能が低下している方のための理学療法を提供します。
生活に必要な基本動作の訓練を通して、運動機能の維持や改善することが主な役割です。
障がい児の成長や発達段階を踏まえて、こどもが持っている身体機能の可能性を伸ばし、心身の安定へと導く視点も重要です。
作業療法士(OT)
作業療法では、主に手指を使った細かな作業を訓練して、日常生活スキルを身につける支援を行います。
児童デイサービスの現場では、着替えや歯みがき、洗顔をはじめ字を書く、ハサミを使うなど、日常生活や学校生活で必要な日常生活動作の訓練が主です。
字を書くのが苦手なこどものリハビリを見ても、手指や腕の使い方の問題なのか、学習障がい(LD)など発達障がいの特性によるものなのか、など、こどもの状態を総合的に見ながらトレーニングをしていく場合が少なくありません。
言語聴覚士(ST)
病気やケガ、発達の遅れといったさまざまな問題から生まれる言語機能の低下や未発達のリハビリテーションを行う国家資格です。
コミュニケーションスキルの中核となる言葉は、言語能力だけでなく音声障害など頭や体のさまざまな領域をフル活用して使わなければなりません。発達障がい児の対するリハビリでは、こども一人ひとりの問題や特性を把握した上で、年齢や成長に応じた発達段階を理解し、適切なサポートを提供する必要があります。
なお、言語聴覚士は、食べ物がつまく飲み込めない、噛めないといった嚥下(えんげ)障害の改善や訓練なども担当します。
ここで紹介した機能訓練担当職員の3職種は、すべて各資格の養成施設を卒業後、国家試験に合格して初めて取得できる資格です。
管理者
児童デイサービスでは、児童発達支援管理責任者の資格保有者が施設の管理者に選ばれます。
施設全体を統括しながら、こどもや家族の状態や希望、意見などを踏まえ、スタッフの情報を加味しながらこども一人ひとりに合わせた療育を提供します。
現場でこどもたちと直接触れ合う以外にも、スタッフの指導やアドバイス、労務管理や環境改善、関係機関との連絡調整など、管理者としての仕事は多岐にわたります。
児童デイサービスの利用方法
では、児童発達支援や放課後等デイサービスなど、児童デイサービスを利用したい場合はどのような流れがあるのでしょうか。
ここからは、通所型の発達支援事業のうち、児童発達支援や放課後等デイサービスの申し込みから利用開始までの流れを以下の7つの順番で解説します。
- 利用相談をする
- 施設を探す・体験や見学をする
- 自治体に受給者証の手続き申請する
- 自治体の受給者証の調査を受ける
- 受給者証が交付される
- 事業者と契約を交わす
- 利用開始する
利用相談をする
児童発達支援や放課後等デイサービスを利用したと思ったら、まずお住まいの自治体の子ども福祉担当窓口や障害児相談支援事業所などに相談しましょう。
相談では利用したいサービスの種類や内容を中心に情報の提供を受けます。各地域にある児童発達支援や放課後等デイサービスの事業所一覧リストや事業所ごとのパンフレットの配布もされています。
実際に利用する前に必要な受給者証の申請手続きや、必要書類などの確認もしておきましょう。
施設を探す・体験や見学をする
事業所一覧リストやネットの情報、口コミなどを参考にしながら、候補となる施設をいくつか絞り込みましょう。自宅から離れた事業所であっても送迎サービスがあれば通所できるので、まずはこどもにマッチしそうなところを選びます。
候補がいくつか決まったら、順番に問い合わせをして保護者だけ見学をしたり、こどもを連れての見学や体験を申し込みます。見学や体験の利用方法は各事業所ごとに異なるので、日時や申し込みポイントなどを確認しておきましょう。
自治体に受給者証の手続き申請する
利用したいサービスや事業所が決まったら、市区町村の福祉担当窓口に通所受給者証(受給者証)を申請します。
申請に先立って、相談支援事業所で「障害児利用計画案」の作成を依頼しましょう。なお、自治体によっては事業所の意見書が必要な場合もあります。なお、相談支援事業所が混雑している場合は、利用者の家族が希望する事業所に相談しながらセルフプランを作成することもできます。
主な必要書類は次の通りです。
- 支給申請書
- 障害児支援利用計画案
- 療育手帳や医師の意見書など発達支援の必要を証明できる書類
- マイナンバー
なお、申請から受給者証の交付まで、自治体によっては2〜3週間程度のところもあれば、1ヶ月以上かかるところもあります。利用したいサービスが決まったら早めに申請手続きをしましょう。
自治体の受給者証の調査を受ける
申請内容に基づいて、自治体から派遣された調査員が自宅などを訪問調査します。こどもの障害の種類や程度、生活状況や家庭環境などを聞き取りをするアセスメントです。
訪問調査では、サービスの種類やサービス内容、利用日数などの聞き取りがあり、自治体は申請書類や調査結果に基づいて受給者証の交付や内容を判断します。
受給者証が交付される
自治体で支給決定になると、受給者証が交付されます。受給者証には利用するサービスの種類、有効期間、利用できる日数などが記載されています。
事業者と契約を交わす
サービスを利用する事業所と受給者証などを提示して契約を交わします。
利用開始する
このように、児童発達支援や放課後等デイサービスといった児童デイサービスを利用するには、事業所選びから申請、利用開始まで1か月以上かかることも珍しくありません。早め早めに相談や申請をしていき、スムーズなこどもの発達支援につなげることが大切です。
まとめ:発達障がいのこどもが通うデイサービスとは?放課後等デイサービスや児童発達支援の利用ポイント
かつて児童デイサービスと呼ばれていた通所型の発達支援事業は、現在、児童発達支援や放課後等デイサービスといったサービスに再編されています。
利用対象の年齢やサービス内容なども異なるため、こどもに合ったサービスを選ぶ必要があります。サービスを利用したいと思ったら、まずは自治体の福祉担当窓口や障害児相談支援事業所などに相談しましょう。事業所選びや必要なサービス内容、受給者証の申請手続きなど、一連のサポートが受けられます。
児童デイサービスは、発達支援の専門スタッフによる生活スキルの訓練やコミュニケーションスキルの向上を目指して生活全般の療育を提供する施設です。
吹田にある放課後等デイサービス「こどもプラス大阪」でも、ソーシャルスキルトレーニング(SST)や柳沢運動プログラムを療育の一環に組み込む発達支援を続けてきました。吹田をはじめ高槻や茨木など大阪北部で児童デイサービスを探しているなら、ぜひ一度「こどもプラス大阪」まで見学や体験利用にお越し下さい。
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